英国現地ルポ、「EU離脱派」の熱狂は冷めた

ジョンソン氏撤退で迷走する英国トップの座

EU離脱の方針に反対するため、雨の中で傘も差さず、アピールし続ける

移民流入に神経をとがらせていたのは、低賃金労働者も同じだ。彼らの間には「移民が増えたことで、自分たちの賃金が下げられてしまった」との感情が広まっていた。

英国はポーランド人の受け入れなどを通じ、サービス業の労働力確保に成功。病院に足を運べば、看護師として従事している、フィリピンやインドなどの出身者が目につく。とはいえ、現実を直視しないまま被害者意識を募らせていた人々にとって、EU域内からの移民を制限しようとする離脱派の主張は、共鳴できるものだったに違いない。

ジョンソン氏がブチ上げた移民政策は、英語能力や仕事のスキル、学歴などに応じ、ビザの取得に必要なポイントを付与する制度の導入が大きな柱。EU域内か域外かにかかわらず、すべての国・地域からの移民を対象にしたものである。

「主権を取り戻そう」の心地よい響き

離脱派がしきりに発していた、「Take Back Control(主権を取り戻そう)」というメッセージも、英国民の心をくすぐった。

フランスの雑誌「ロブス(L’OBS)」は4月に「Brexit Or Not Brexit(英国離脱か否か)?」との特集を掲載。第2次世界大戦時の英首相、ウィンストン・チャーチルが1930年に残したとされるコメントを載せた。「われわれは欧州とともにいるが欧州の一部ではない」──。「われわれは欧州人でなく英国人」という誇り高きアイデンティティ。離脱派のメッセージがこうした意識を刺激し、脱EUへ駆り立てたのだろう。

一方、キャメロン首相は公約で年間の移民純増数を10万人へ減らすことを掲げたが、具体策は最後まで明確に示せないままだった。

残留派はキャンペーンで離脱に伴う経済的損失の大きさも盛んに強調。離脱派はこれを「プロジェクト・フィアー(恐怖作戦)」と非難した。離脱派の得票は1741万票余りで、対する残留派は1614万票超を獲得と、その差は約127万票である。が、こうした作戦なかりせば、離脱派と残留派の得票数には、500万~1000万票と、かなりの大差がついたとの見方もある。

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