英国現地ルポ、「EU離脱派」の熱狂は冷めた

ジョンソン氏撤退で迷走する英国トップの座

横断幕には「ONE LOVE, ONE UNITY」(1つの愛、1つの連帯)の文字

英国に移り住んだ人たちが一様に不安を口にするのは、国民投票で離脱派が勝利した背景に、EUからの移民の問題があるからだ。

金融市場では投票前、残留との見方が優勢だった。開票直後には、残留の票が離脱を上回るという一部調査会社の結果が出たことで、英国通貨ポンドが上昇。1ポンド=1.50ドルと、2015年12月以来の水準まで、ポンド高が進んだ。現地進出の日本企業も「コンティンジェンシー・プラン(危機対応策)を検討したところもあったが、多くは意外感を持って受け止めた」(日本貿易振興機構の坂口利彦ロンドン事務所長)。

しかし大和総研・ロンドンリサーチセンターの菅野泰夫シニアエコノミストは打ち明ける。「5月ごろから離脱シナリオをメインに据えていた。移民をめぐり険悪なムードが高まっているのを感じたからだ」。

移民のせいで医療や学校も質低下?

実際、国民投票で離脱派が勝利したのは、同派を率いた保守党のボリス・ジョンソン前ロンドン市長らが、キャンペーンで移民問題を焦点にしたのが奏功した面が大きい。

英国への移民流入は、2004年のポーランドやハンガリーなど東欧諸国のEU加盟以降、急増。英国家統計局(ONS)が5月に公表したデータによれば、2015年の移民純増数は33万3000人と、前年を2万人上回った。「病院に行くと移民であふれており、満足な診察を受けられない」「学校には英語を話せない生徒がいっぱい」「移民が増えたため、家の値段が上昇、簡単に買えなくなった」。一部国民にはさまざまな不満が鬱積していた。

「EUが移民をコントロールできないことで、財政が過度に圧迫されて、医療や学校など公共サービスの低下を招いている」というのが離脱派の言い分だ。そのうえで移民規制の必要性をしきりに説いた。

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