欧州発金融危機が再燃しても不思議ではない ユーロとポンドが急落した当時と似ている

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欧州の銀行問題とポンド安に共通するのは、「金(ゴールド)」である。2010年以降の欧州債務危機が市場の最大の懸念となったころ、投資家の資金は金に向かった。その結果、2011年9月に金価格は1トロイオンス=1920ドルの史上最高値を付けた。投資家のリスク回避姿勢が強まる、典型的なリスクオフの状況の中、金が買われたのである。

2008年のリーマンショック後の安値からの上昇率は182%に達するなど、金価格の歴史的な上昇局面になったことは記憶に新しい。また、今回のポンド安を背景に、ポンド建て金価格の上昇率が極めて大きくなっている点にも注目すべきであろう。年初来のポンド建て金価格の上昇率は46%に達し、ユーロ建ての26%、円建ての8%を大きく上回る。

金の相対的な優位性が高まっている

海外の投資家は、比較的トレンドに追随してポジションを増やす傾向があるが、これだけの通貨安になれば、単純にその通貨建ての金を買えば、為替益を獲得することができる。さらに、ベースとなるドル建て金価格も上昇しているため、一挙両得である。常時であれば、欧州通貨安=ドル高の局面では、ドル建て金価格が下落するため、今回のような上昇率になることはない。それだけ、現在の市場環境は深刻であるともいえる。欧州通貨危機の際もユーロやポンドは急落しており、現状は当時とかなり似た状況にある。

世界的な低金利の状況の中、主要国の国債利回りがマイナスになっている。そのため、金利がつかない金の相対的な優位性が高まっている。筆者が定義する金の保有コストは歴史的低水準にある。過去の事例では、このようなときに金投資をしておくと、数年後には非常に良いリターンを得ることができている。株式市場の不透明感に対して、安全資産として金を購入することも重要だが、いまは金を保有すること自体が優位な時期が到来しているわけである。

市場の関心は、8日発表の6月の米雇用統計に向かっているが、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを検討できるような状況ではない。結果的に、金の保有コストは今後も当面は低位で推移することになろう。もちろん、資産を金に移せば絶対に大丈夫というわけではない。しかし、いまは株式よりも金などの実質資産に目を向けるべき時期にあると考えている。

江守 哲 コモディティ・ストラテジスト

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えもり てつ / Tetsu Emori

1990年慶應義塾大学商学部卒業後、住友商事入社。2000年に三井物産フューチャーズ移籍、「日本で最初のコモディティ・ストラテジスト」としてコモディティ市場分析および投資戦略の立案を行う。2007年にアストマックスのチーフファンドマネージャーに就任。2015年に「エモリキャピタルマネジメント」を設立。会員制オンラインサロン「EMORI CLUB」と共に市場分析や投資戦略情報の発信を行っている。2020年に「エフプロ」の監修者に就任。主な著書に「金を買え 米国株バブル経済の終わりの始まり」(2020年プレジデント社)。

 

 

 

 

 

 

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