賃金カーブの変化ないが中身は大きく変貌
個別の企業ごとの数字も気になるが、全体として日本の給料はどう変化しているのか?結論からいうと給料は全体的に下がる傾向となっている。
その要因としていちばん大きいのが賞与の減少だ。賞与(特別手当を含む)は、1990年代をピークに実に3割以上も減少している。賞与は業績に連動しているといわれるが、企業業績の回復すべてを反映しているわけではない。
「景気がよくなれば正社員の給料が改善するというのは、過去の話」(第一生命経済研究所経済調査部の熊野英生首席エコノミスト)と、いえる。
一方、決まって支払われる月額の所定内給与は、00年ごろから頭打ちとなっている。各年代別のモデル賃金(家族構成など標準的なライフスタイルを前提とした給料)の変化を見ても、5年前とほとんど変化が見られない。
「賃金カーブは変わっていないのが実状。月例賃金や何かの手当をカットすることは、不利益変更となるため、リストラ時以外に行うのは難しい」(労務行政研究所『jin‐jour』編集長の原健氏)。月例賃金は、ベースアップなどによる上昇がないのに加え、こうした下方硬直性もあり、大きな変動が見られない。
ただ、その中身、月例賃金の構成要素は大きく変わっている。
構成要素を詳細に見ると、年齢や在籍年数といった、年功序列的な給料(属人給)は、成果主義の導入が叫ばれた00年ごろから、その割合を大きく減らし、職務や仕事内容に応じて支払われる仕事給(職能給も含む)が大きなウエートを占めるようになった。最新の調査でも、月額給料の8割を仕事給が占める結果になっており、大きなトレンドは変わっていない。
こうした仕事給のウエートの高まりによって生じた変化は、同一企業内での賃金格差を顕在化させた。
産労総合研究所の調査によると、同一企業での上位昇進昇格者と下位昇進昇格者の基本賃金の差は、35歳で対象企業平均7.7万円、50歳になると同平均17.4万円となっている。
分布で見ると、あまり差をつけない企業が多いが、それでも、高年齢層を中心に金額の差を広げる企業は少なくない。
さらに、月額給料以上に評価や査定による格差を設けているのが賞与で、それを含めた年収ベースで見れば、その差はさらに開く。
65歳雇用義務化が給料に及ぼす影響も無視できない。NTTグループは、40~50代の賃金カーブを緩やかにして、雇用延長の原資とする新賃金制度を提案。新たな給料変革の波が生まれつつある。そんな状況だからこそ、現在は他社や業界との比較を通して、自らの給料について考えるべき、格好の機会といえる。
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