東芝、室町氏は特別顧問で「外から見守る」 もう売るものはない、問われる新体制の実力

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――役員候補者の方々は、浜田康さんの『粉飾決算』(日本経済新聞出版)は読まれたか。東芝が二度と粉飾を起こさないために、本を読んで勉強していただきたい。

室町社長:浜田さんの本は非常に有名だ。この会計問題に携わった東芝のメンバーは私を含めて読んでいると思う。私どもとしては、このような事態は二度と繰り返さない、という固い決意をもっている。

――カンパニー制は維持され、自主自立は継続されるようだ。一部では、今回の不正会計問題はカンパニー制が温床になったのではないか、という指摘がある。なぜ残すのか。

室町社長:カンパニーに対して、経営トップが無理な“チャレンジ”を行った結果、カンパニーが不適切な会計処理を行った。カンパニーに自主自立的な経営をしていただいて、それぞれ成長戦略がとれるように、プロアクティブ(事前対策的)なオペレーションにした方が東芝の経営はよい方向にいく。

苦渋の選択で東芝メディカルを売った

東芝の新旧経営陣。右から、室町特別顧問、志賀新会長、綱川新社長(いずれも総会後に就任。撮影:梅谷秀司)

――私は東芝一筋でやってきた。今回の役員体制は、東芝生え抜きの取締役が数名しかいない。現場の声が反映されないのではないか。現場の声を吸い上げる方法を考えていただきたい。悲劇を繰り返さないでほしい。

室町社長:社外取締役6名、社内取締役4名で次の経営を担う。社内の4名は、会長に就任予定の志賀重範を含めて、執行権限を持つ。このラインで現場の声を吸い上げる。経営幹部から姿勢を改めなければならない。休みの日に幹部経営者に意識改革研修をやっている。約170名が4回にわたって、外部の方の講演やグループ討議を行い、意識改革している。現場でもCSR(企業の社会的責任)職場ミーティングを開催している。

――数十年来の株主だ。粉飾は東芝だからすぐ片付くと思っていた。あれよ、あれよという間に、問題が大きくなった。東芝メディカルを売るなど、なんだかんだ様々なことが起きた。不正会計問題は氷山の一角で、根本的な問題があるから、こういうことが起きたのではないか。

室町社長:2015年度に根本的な構造改革を断行した。事業状況が芳しくない中、ご支援いただいているメインバンクさん(三井住友銀行、みずほ銀行)、準メインバンクさんを含めて、さまざまなご意見をちょうだいした。その中で今回の事案を契機として、東芝としては、全ての課題を2015年度に処理すべきだということで、ゼロから出発してもらいたい、という要望があった。

構造改革を断行するに当たって大きな資金がいる。その資金を捻出するため、苦渋の選択ではあるが、東芝メディカルの株を売った。また今期にクロージング(株譲渡手続きの完了)を計画しているが、長い間、東芝のブランドに貢献をしていた白物家電事業も売却する。債務超過という最悪の状況になると、株主の皆様にはより多くのご迷惑をおかけするところだった。何とかそれは回避できた。課題事業は多数あったが、考えられる最大の対策を2015年度に打った。今年度は正常な姿をお示しする。

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