総会の冒頭、大戸屋ホールディングスの窪田健一社長は、1500人近い株主の前で、涙で声をうわずらせながら、こう訴えた。
「私は尊敬する三森久実前会長のようなカリスマ性のある経営者ではありません。だからこそ、風通しのよい企業風土を作り、新たな経営体制で、大戸屋の経営理念の実現に向け邁進していきたいと思います。(略)それこそが、志半ばにして亡くなった、前会長への最大の恩返しであると考えております」
役員人事をめぐる両者の溝
6月23日、大戸屋は東京都内のホテルで定時株主総会を開催した。会社側からは第1号議案として、取締役11名選任の件、第2号議案として監査役2名選任の件が議案として提示されている。
定食屋「大戸屋ごはん処」を国内に340店ほどを展開する大戸屋がにわかに話題を集めたのは、5月中旬のこと。会社側が発表した役員人事案に、創業家が反対の意向を示したことにさかのぼる。
事態の経緯はこうだ。2015年7月、実質的な創業者だった会長の三森久実氏が57歳で急逝した。久実氏は18.79%の株式を保有したまま亡くなったが、妻が13.15%を、息子の智仁氏が5.64%を、今年3月にそれぞれ相続している。
久実氏は亡くなる直前の2015年6月に、智仁氏(当時26歳)を常務取締役に任命している。ただ、智仁氏は2013年に大戸屋へ入社したばかりで、目立った実績があるわけではない。ある関係者は「久実氏は智仁氏をいつか自分の後継者にという思いがあったようだ」と語る。
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