しかし、今回の窪田氏の説明は、創業家側の説明とは食い違っている。かつて智仁氏は東洋経済の取材に対して、「(久実氏が亡くなって以降)窪田社長とコミュニケーションが取れなくなった。現在は弁護士を通し、アプローチしているが、面会は実現していない」としている。
さらに、常務取締役兼海外事業本部長から、ただの取締役となった件は「久実氏の海外出張に同行し、引き継ぎを受けていた。久実氏が急逝しバタバタしているうちに任を解かれてしまった。窪田社長からは理由について一切説明がなかった」(智仁氏)と述べていた。
株主からも厳しい声が飛ぶ
窪田氏の説明の後、出席した株主との質疑応答に移った。株主からもこうした状況について、厳しい質問が相次いだ。
ある株主は「野菜工場事業や、セントラルキッチンを使わないことなど、前会長が味を追求するために行なっていたものを、収益に今つながらないからやめて、オペレーション(業務の見直し)で利益を出していこうとしか見えない。これからどういう方向に会社を持っていこうとしているのか」と聞けば、「味、おいしい料理を出すことが中心だ」(窪田氏)と回答した。
別の株主が「お家騒動で大戸屋のブランドイメージが低下するという懸念がある」と質問すると、窪田氏は「株主様にご心配をお掛けしないよう、ブランドが毀損しないよう一同必死になってやっていきたい。申し訳ございませんでした」と謝罪した。
ただ、創業家については「今後とも、創業家と株主には理解をしてもらえるように対応していきたい。(創業家との関係については)まだ正式な申し出がない状況なのでこれ以上のコメントは控えたい」と曖昧な回答に終始した。
今年の株主総会は注目度が高かったこともあり、出席した株主数は1494人(昨年は1280人)と前年を上回った。時間は1時間20分(昨年は1時間10分)。会社側が提案していた、取締役11人選任、監査役2人選任の2つの議案は賛成多数で可決した。人事案に反対を表明していた創業家側は、一度も発言に立たず、最後まで沈黙を貫いた。
会社側の人事案が通ったことで、一連の騒動はひとまず会社側が勝利を収めた形となる。ただ、総会に出席した株主からは「窪田社長が言っていたようにオペレーションを優先にしたら大戸屋本来の家庭の味が失われる」、「会社側の説明は十分に納得できるものではなかった」という不満の声もあがった。
何より、依然として創業家側は2割近い議決権を握る筆頭株主である状況に変化はない。はたして、ここで幕引きとなるのか。それとも対立は継続するのか。
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