しかし、それを分析するのは、現時点の学問には無理だろう。なぜなら、私が売るか買うかは、あなたが売るか買うかにかかっており、あなたが売るか買うかは、他の投資家たちが、明日、あさって、来年、売るか買うかにかかっているからだ。
「厄介な人々」に惑わされるな
これらのダイナミズムを分析するのは、現時点の学問における理論モデルからは程遠い。2008年のリーマンショックにより、バブルの重要性が再認識され、米国の一部の行動ファイナンス理論は、この方向に大きく舵を切りつつあるが、まだ道半ばというよりは、千里の道を一歩踏み出した程度だ。
第三の話は、少し脇道にそれるが、行動経済学者よりも役に立たない、いや、学者は役に立たないだけだが、有害な人々がいる。それは一流半のコンサルタントたちだ。二流のコンサルタントは、ましだ。
なぜなら、言っていることが間違っていることがすぐにわかる。頭が悪いから、論理の破綻が明らかか、明らかに現実に矛盾することを言っている。だから、我々をだますことはできない。なので、彼らは無害だ。
しかし、その上のコンサルタントはやっかいだ。頭が良いから、論理はきれいにつながっている。また、パワーポイントのプレゼンも見事だ。
問題は、そのきれいな論理が、現実と整合的かどうかということだ。いや、さすがに整合性がない、破綻が見えてしまうようなロジックは言わない。論理はきれいだが、それが真実かどうかわからない。しかし、きれいな論理で、われわれよりも頭が良いから、思わず説得されてしまう。説得されたという意識もなく、なるほど、そのとおりだ、と思ってしまう。これは厄介だ。
これはコンサルタントに限らない。たとえば、ノーベル経済学賞を受賞しているポール・クルーグマン。彼は、とことん財政出動せよ、と言っていたが、これは実際にはとことんはできないから、必ず彼の提言は誤りとならない。
政府が財政出動で経済の回復に成功すれば、自分の言ったとおりだし、財政出動がうまくいかず、財政赤字だけが膨らめば、それはとことんやってないのがいけない、中途半端だった。もっとやれば、突き抜けて経済が回復したのに、ということになる。
今流行のリフレ派も同じだ。どんなに金融緩和しても、普通のモノはインフレにならない。消費者物価にしても、円安による輸入インフレ以外はインフレにならない。だが、すぐに資産インフレにはなる。
そうなると、金融は引き締めに転じないといけない。そうすると、日銀が引き締めに転じるのが早すぎたのだ、という批判ができる。これが2006年の量的緩和解除、ゼロ金利解除のときに起きたことだ。しかし、世界は確実にバブル崩壊へ向けて、金融バブルをさらに膨張させていたのだ。
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