高級化粧品は王道の価値を大切にしながらも、つねに革新的なブランドでなければならないと砂金氏は語る。「特にマスクのような日常ケアでないものについては、他社にあるものをうちから出す必要はないと思っています」。
4度の転職は、自分の限界を超えるため
実は文系出身者の多い化粧品の商品開発だが、砂金氏はいわゆる“リケジョ”だ。明治大学農学部ではバイオテクノロジーを専攻した。新卒で入社したのは、理系卒の女性限定で、商品企画人員を募集していたカネボウ化粧品だった。
「どこに配置されるかが、ちゃんとわかっているのが安心でした。美容やファッションは好きでしたし、いわゆる『白衣仕事』よりもきらきらした仕事をしてみたいな、と思って」
だが、砂金氏はわずか2年半で次のキャリアへ進む決意をする。
当時、カネボウは業績悪化の一途をたどっており、04年には産業再生機構の支援を受ける状況に陥った。
加えて流通サイドは、GMSやドラッグストアの出店ラッシュの時代。化粧品に適用されていた再販制度もいよいよ97年に撤廃され、業界に低価格化の波が押し寄せた。
「私が担当していた中価格帯の化粧品ブランドも、もれなくディスカウントの対象になって。ものづくりにおいてコスト意識は大事だけど、もっと価値ある商品を作れる仕事をしたい。若いながらにそんなことを思い、アルビオンに転職しました」
2番目の職場となったアルビオンは、化粧品専門店、百貨店を中心に高級化粧品を展開する老舗メーカー。砂金氏は商品開発の専任として約7年間働いた。念願の高級品開発に携わる日々だったが、新たな問題意識が芽生える。
「だんだん、(仕事が)こなれてきちゃうんですよ。こういう段階を踏めばちゃんとローンチできるな、という具合に。思考に広がりがなくなってきたと感じました」
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