安倍首相は、パンドラの箱を開けるのか? 日中韓で新リーダーが誕生

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高齢化社会でリベラルが勝つのは難しい

20代から40代の大半は文候補を支持し、50代以上は朴候補を支持する。実際20代、30代で朴候補に投票したのは33%、これに対し50代の62%、60代の72%が朴候補に投票し、これは文候補と正反対であった。

高齢者層の間では、朝鮮戦争後の貧困にあえいだ韓国が瞬く間に豊かになっていく高度成長を主導した朴正煕元大統領への支持は厚く、その流れで娘である朴候補に高齢者の票が集中した。

逆に李明博政権下での「若年失業率増加」の思い出が強い若年層は、平等な社会を志向する人権派の文在寅氏を支持した。大企業の利益ではなく若年層の雇用を求める若者が文候補の支援に回った構図だ。

0.1%から0.04%の僅差のデッドヒートが各種世論調査で報告される中、得票率が高まれば民主統合党の文在寅候補を利すると言われてきた。一般的に、どこの国でも若年層の投票率は低く、全体の投票率が高いということは若者が投票に行ったことを意味する。また若者はたいてい革新派に投票し、高齢者が保守政党に投票する傾向にある。ところがこの“韓国版世代大戦”の接戦を制したのは与党セヌリ党の朴候補であった。

高い投票率にもよらず保守派が勝利した理由として、02年当時と比べて韓国の20-30代の人口構成比は48.3%から38.3%に低下し、逆に50代以上の有権者が29.3%から40%に増えたことが挙げられている。そう考えると、高齢化が進む国々で、革新派が勝利するのは今後ますます難しくなるのかもしれない。

ともあれ、韓国の憲政史上のみならず、北東アジアの歴史で初の女性大統領が誕生することとなった。

韓国・日本・アメリカが選んだ“変化より安定”

李明博大統領の“失政”にも関わらず(ちなみに経済政策ではかなり成果を上げたと思うのだが、李大統領を擁護すると同世代の韓国人の友人が怒るので触れない)同じ党の朴候補が当選したことから現地の新聞では国民が変化より安定を採ったと報道されている。

くしくも、アメリカでも変化を叫ぶロムニー氏より現職のオバマ大統領が選ばれ、日本でも“安定”を志向した有権者は自民党を選んだ。これに対し韓国では、「この国の有権者はどうなってるんだ!?」「馬鹿すぎる」と私の同世代の友人は悲嘆にくれ、本気で激怒している点は冷めた日本と対照的だ。

深刻に分裂する国内世論を統合するのが新大統領の最大の課題だとされており、朴大統領は就任直後から韓国社会永遠の課題である“大統合”を目指し、経済の民主化や福祉に取り組み、目に見える成果を早期に出すよう尽力するとみられている。

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