「誰でもできる仕事を東北に回すのでいいのか。もちろん、それはそれでありがたいけど、それだけだと未来が描けない」
単に雇用の数を増やすだけなら、単純な仕事を臨時でどこからから持ってくれば、成立するかもしれない。ただそれだと、もっと安い賃金で請け負う地域や国が出てくれば、あっさり切り替えられてしまう。それが鈴木さんの持論だった。
自分たち、東北にしかできないことを
「だから自分たちのアイデアで、自分たちにしかできないことをやっていく場所に、東北が変わらなくちゃいけない」
鈴木さんのサイトで販売されているウエットスーツの端材を使ったアクセサリーはそのよい例だ。その製作にはある程度の技術が必要で、それは「手に職」になりうる。
「ITによる支援がどれだけ通用するのか」と僕が悩んでいた時期にも、鈴木さんは、そっと背中を後押ししてくれた。
「東北にITで商売する人が増えたら、それは東北のあるべき未来だと思う。だから、長谷川さんがやっていることはすごいことだよ」と。
今では、鈴木さんは僕らと一緒に支援側にまわってくれている。現在、Yahoo!ショッピング内の「レイダース」や「石巻復興ユナイテッド」内では一緒にプロモーションを展開していて、アパレル関係の商品を提供している。
「この商品いいと思うけど、どこで販売しよう?」というときに相談すると、「ウチで売るよ」と鈴木さんが快諾してくれる。
会津木綿を使ったスカーフなどを出している「iie(イー)」というブランドも、そんな商品のひとつ。「iie」とは“IIE”と311を逆さにした名称で、震災後、大学院を出たばかりの地元の若者たちが商品開発して立ち上げたものだ。
このように東北では、あまり知られていないが、食品だけでなく、アパレルや雑貨など魅力的な商品が続々と誕生している。一つひとつの商品に復興に向けた思いが込められていて、ドラマチックな開発ストーリーも存在する。
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