本来なら、AO入試の導入で、そうした問題が改善されていくはずだったが、日本のAO入試は技能は見るけれども、今度は学力をほとんど見ない。その結果、基礎学力がない生徒がどんどん大学に入ってくるようになった。
推薦入試にしても、定期テストで良い点を取る生徒の学力が高いかというと、必ずしもそうではない。定期テストは出題の範囲が狭く、暗記中心の勉強でどうにかなってしまうからだ。
実際に、定期テストでは良い成績を修めていても、模試等の初見の問題で思うように得点ができない生徒は多く存在する。
それぞれの試験の方式は、1人の生徒を見るに当たり何らかの欠点がある。もっとバランスよく見ればいいのに、一般入試は学力、推薦入試は定期テスト、AO入試は技能、というふうに部分的に見る。一般入試を受ける生徒は、極端な話、評定平均値が5段階で「3」でも難関大に受かる。
受験生なのに、勉強時間は「1時間未満」
今年、ベネッセが行った「大学生が振り返る大学受験調査」で、入試の方式による高校時代の過ごし方の違いが明らかになった。
高校3年の9月時点の学習時間は、一般入試での入学者平均は「3.8時間」だ。これに対し、推薦・AO入学者は「1時間未満」の比率が「45.0%」となっており、約半数の生徒が「受験生」にも関わらずほとんど勉強していない。
入試難易度(進研模試の偏差値基準)別にみると、偏差値が低いほど「1時間未満」の比率が高まり、偏差値49以下では「64.8%」と高くなっている。加えて、推薦・AO入学者の5人に1人が「受験対策をしなかった」と回答している。
※ここで「受験対策」とは、「一般入試の教科学習、推薦・AO入試のための小論文や面接などの準備」を指す。
このように、受験期の学習習慣が未確立なまま大学へ進学していることが判明した。日本の入試のバランスの悪さが、生徒の学習時間に露骨に表れている。
試験対策の流れに話を戻そう。2次試験がない大学を目指す生徒は、センター試験の得点で合否が決まるので、ずっとセンター試験対策をすることになる。
センター試験は、記述式ではなく、選択肢の中から正しい答えを選ぶという能力が問われる。センター試験の得点だけで合否を決めている大学は、生徒と大学のマッチングキーがセンター試験のみだ。
そこからは、アドミッションポリシー(大学の入学者受け入れ方針、自校の特色や教育理念などに基づき、どのような学生像を求めるかをまとめたもの)は見出しにくい。いわば、“センター試験の選択問題から正解を導くことができる生徒を受け入れる”ということになろうか。
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