「プロレスブーム」が再来した本当の理由 誰でも受け入れる土壌は企業社会と重なる

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常見:来てくれる努力は大事ですよね。それは「ご招待券」を配るだけじゃダメなんですね。

三田:そうそう、チケットを安くすることではない。

常見:手ぶらで来て、いかにお土産を持って帰らせるのかなんでしょうね。プロレス「ブーム」ではなく、普通に続いてくれればいいなと思うんです。

三田:「ブーム」は終わってしまうものですからね。棚橋選手が「みなさんの生活の中にプロレスがあってほしい」と言ったのです。それは、誰かをチョップするとかそういうことではなく(笑)、通勤時間にスマホで動画を見ようかな、サイトを見ようかなでもいいんです。生活や人生の中でプロレスが当たり前に存在することを目指しているんですよね。

プロレスに「たどり着いた」選手たち

常見:ぼくが興味を持っているのは、プロレスラーになる人は、その前になにをしていたのか。ぼくは、移行(トランジション)研究が専門なんです。人は何から何になるのかに興味がある。就活の研究をしてきたのもその一環です。

今のプロレスラーには柔道や大相撲といったアスリートが少ない傾向にあります。アスリートとして大きな活躍をしていない人も、プロレスに入ってきています。棚橋選手も、レスリングもやりつつも、もともとは学生プロレス出身ですしね。

三田:私もプロレスに「たどり着いた」という表現を使います。プロレスはいろんな人を受け入れる懐の深さがある。

象徴的なのは愛川ゆず季さんでしょうね。以前、cakesで「愛川ゆず季がガラスの靴を脱ぐとき」という記事を書いたことがあります。彼女はもともとバレリーナになりたかったけれど、自分の体格では難しいと感じ、テコンドーを始めた。上京し、スカウトされたのでアイドルになったけれど、「崖っぷち」と呼ばれうまくいかなかった。そこで、最後に彼女が自分の人生をかけたのがプロレスだったんです。

彼女は全力で業界のトップになり、あっという間にその椅子をおりていきました。ものすごく、かっこいい。彼女は自分の人生において、バレエもテコンドーもアイドルも、全部プロレスをやるためにやってきたんだと思える、と言って辞めていったのです。

彼女は生きてきたすべてをプロレスにつぎ込みました。それをプロレスは彼女に求めたし、求めすぎてしまった。あまりにもあっという間にスターになったので、やっかみもあったでしょう。「苦しかった」と言って彼女は去っていきましたが、それでも彼女がプロレスにたどり着いてくれてよかったと思います。

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