常見:新日本プロレスがインディー団体の試合をバカにしたのをきっかけに、1997年には大日本VS新日本の対抗戦をやりましたよね。ちょうど社会人になる直前、大学生の頃で、生で見ていましたよ。そんな因縁のある大日本の小鹿さんが、棚橋選手にそういうことを言うのは胸に迫ります。
三田:今思うと、東京ドームで小鹿さんが手榴弾をぶら下げて軍艦マーチで入ってきたり、中牧昭二選手が有刺鉄線ボードを担いだり、大日本プロレスはよくやりきったなと思います。当時は失笑もあったと思うのですが、「この団体はすごい」と入ってくる若い人もいたようです。
私が見てきた20年は、メジャーの団体が大きく揺れたのと同時に、努力してきたインディーが伸びてきた時代でもあります。本では大日本プロレスの登坂栄児さん、DDTプロレスの高木三四郎さんを取り上げました。昔は、メジャーとインディーに壁があったのですが、今は「いいものはいい」とお互いが認められるようになっているんです。
チケットを安くすることが「ファンサービス」ではない
常見:プロレスブームの原動力になっているのは、ファンサービスの良さだと思っています。スポーツ全体を見ても、うまくいっているのはファンサービスのいい団体です。たとえば、横浜DeNAベイスターズは、上位争いに食い込むことはないですが、SNSを魅力的に使ったり、球場に多様なシートを設けたり、ファンサービスに特化して、人気を得ています。
三田: DDTのファンサービスの良さは有名ですが、最近は新日本も頑張っています。大日本なんかは、デスマッチの試合後に体に画鋲がささって血が流れていても、お客さんのお見送りをする。次の日には血だらけだった選手が、商店街で子どもとプロレス教室をしたりする。その距離の近さがプロレスの魅力でしょうね。
これまでアイドルのファンだった女性も、たまたまプロレスを見に行ったら入退場で触れるかもしれない、ハグもしてもらえるかもしれないとその近さに驚き、ハマったと聞いたことがあります。
常見:音楽でもライブを続けているバンドは強いですよね。棚橋さんは「とにかく手ぶらで来てくれ」と言いますよね。勉強しなくていいと。千葉商科大学の教え子の中から有志を募ってプロレスを見に行くのですが、みんな「こんな面白いとは思わなかった!」と喜びますね。
三田:今は、各団体が自分のところで動画サービスなど独自のチャンネルを持っている。手ぶらで行っても気になる選手が絶対に出てくるので、後で帰って調べることもできますよね。
常見:昔は、東スポや週プロを読んでいないとプロレスがわかりませんでした。でも、今は選手や団体が発信力を持っていますし、記者会見もインターネットで配信している。グッズも通販で買えます。
三田:だから、「いい試合しているのに、見に来てくれない」という言い訳は使えなくなりました。「みなさん来てください」と言っているだけではなく、どうやったら来てもらえるのか真剣に考えているところが、結果的にお客さんを呼んでいると思います。
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