マッキンゼー男とボスコン女、NPOを創る 新世代リーダー 小沼大地、松島由佳
「留職」。テレビや雑誌など多くのメディアで紹介されているこの言葉に、聞き覚えがある人もいるのではないだろうか。
留職とは、企業の社員を新興国のNPOなどに一定期間派遣し、現地の社会課題の解決に挑ませるというプログラムだ。現地の貧困層への社会貢献が果たせるだけでなく、企業にとっては、グローバル人材育成、新規市場開拓などのメリットがある。2012年2月に留職を実施したパナソニックを皮切りに、13年1月から3月にかけては、NEC、テルモ、ベネッセなど6社から、10名程度の派遣が予定されている。
事業を展開しているのは、NPO法人のクロスフィールズ。共同代表を務める小沼大地さん(30)と松島由佳さん(27)が11年春に立ち上げてから、まだ2年も経っていない。
仕事を「志事」に変える
小沼さんがクロスフィールズ設立へと至ったきっかけの1つは、大学卒業後の、青年海外協力隊での活動にある。派遣された中東シリアのNPOで、さまざまな出会いの中から、留職の構想につながる芽のようなものを得ることができた。
ところが協力隊の任期の後半に、ある試練が待っていた。小沼さんの協力隊でのミッションは「環境教育」だったのだが、配属されていたはずの機関に環境分野の活動はすでになく、「おまえはいったい誰だ?」と言われてしまったのだ。そこから紆余曲折があり、最終的には半ばその機関をクビになるという窮地に立たされた。
そこで小沼さんは、「ならば」とシリアで就職活動を始めた。自分で作った企画書を持って民間企業や政府系機関を歩き回り、共に環境教育に取り組んでくれる組織を探したのだ。結果、首都ダマスカスの環境局に採用され、そこで現地の小中学生向けの環境教育プロジェクトに約半年間取り組んだ。
試行錯誤の末に作り上げたプロジェクトは成果を上げ、後続の隊員が派遣されるまでになった。このとき経験したやりがいと達成感は、当時学生だった小沼さんが、働くことの意味を定義づけるようなものになった。
しかし、その後帰国した小沼さんはショックを受ける。先に就職した大学の仲間たちの目の輝きが鈍っているように見えたからだ。
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