グローバル人事の「目」(第7回)--「留学」ならぬ「留職」という新しい選択肢
◆駐在員の選抜も年功序列という現実
「若いうちから海外に出てチャレンジしたい!しかし駐在員として派遣されるまで何年間も待たされるので気持ちが萎える」という声を聞くことが多い。
なぜ希望しても海外駐在の順番が回ってこないのだろうか。
それは、海外駐在員のマネジメント能力が低いために、日本からの若手人材を教育目的で受け入れて育てる余裕が海外現地法人にないからである。そこで日本企業はやる気のある若手社員の意欲に応える取り組みを模索し、実践し始めている。その取り組みの一つとして「留職」があり、今回はこの「留職」について解説する。
◆「留学」ならぬ「留職」という選択
「留職」とは「留学」のもじりで、企業に所属する人材がグローバル感覚を養うために現在の職場をいったん離れ、一定期間、新興国の現地NPOなどの社会セクターや公的機関で働くことである。この留職プログラムを日本で初めて立ち上げたのは、東京の特定非営利活動法人クロスフィールズであるが、大手コピー会社のR社をはじめ独自に同様のプログラムをデザインし、実践しているケースも増えてきている。
この「留職」プログラムは、アメリカで2008年頃から急速に広がったICV(International Corporate Volunteering:国際企業ボランティア)と呼ばれる活動が原点だ。IBMなどの大手企業を中心に、アメリカでは2011年時点で21企業が導入している。年間で合計2,000人以上のビジネスパーソンが新興国に派遣され、現地で社会貢献活動に従事している。この留職プログラムは企業の社会貢献と、グローバル人材育成が合わさった新しい動きでもあり、自社のグローバル人材の育成や新興市場の開拓を目的にデザインされている。