グローバル人事の「目」(第7回)--「留学」ならぬ「留職」という新しい選択肢
また、この留職の活動について社内のSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)を活用し、現地での活動内容を毎日レポートした。さらに、そのレポートにコメントを書けるようにして、留職活動に興味を持つ日本国内の社員と相互にコミュニケーションを取れるようにした。ベトナムで孤立しがちな現地メンバーにとっては、SNSでの毎日のやりとりで得られる日本からの応援のコメントやメッセージが、心の支えとなったようだ。
また最後の最後でソーラークッカーに技術的な欠陥が発生し、製作できるかできないかの瀬戸際まで追い込まれた。サポートメンバーの協力を得ても解決できず、諦めかけた時、現地のメンバーの中から「社内のベテラン技術者なら解決できるのではないか」というアイディアが浮かび、ベテラン技術者に相談を持ちかけた。
最初、ベテラン技術者たちは戸惑っていたが、製品開発に取り組むチームの姿に感銘を受けたこと、自分の技術力を通じて現地に貢献できることに面白みを感じたことから、アドバイスしてくれるようになった。そして、このベテラン技術者からのアドバイスが突破口となり、無事に試作品を製作することができた。
このように留職プログラムは現地に派遣される社員だけでなく、日本国内にいる社員のレベルアップも図ることができるのが特徴である。
◆赴任先を見る視点が変わる−よそ者的な視点から現地に馴染む視点へ
留職プログラム経験者との話の中で、日本企業の駐在員と現地を見る視点が大きく違うことを感じた。全員とは言わないが駐在員は海外赴任先を「単なる製造拠点かマーケット」としか見ていないと感じることが多い。あくまでも「ビジネス」だけのために来たという印象を受ける。実際に駐在員に聞いてみると、ビジネスで最低限必要な現地人との付き合いを除けば、日本企業の駐在員「村」の人達とのみ交流している。