マッキンゼー男とボスコン女、NPOを創る

新世代リーダー 小沼大地、松島由佳

留職の大きなポイントの1つは、社会課題の解決、つまりは社会貢献だが、厳しい競争を強いられている企業にとっては、美しい理想にすぎないととらえられないのだろうか。

そんな問いに、松島さんが身を乗り出す。「逆です。社会課題の解決をビジネスを通じて行うことが、大きなビジネスチャンスにつながるかもしれません」。

先進国の市場が先細りしていく中、急務なのは新興国の市場開拓だが、日本流のやり方を押し付けるのでは成功しない。富裕層に対してはすでにモノ・サービス共に各国企業の進出が進む一方、BOP(Base of the Pyramid)市場には大きな可能性が眠っている。各国の貧困層が直面している社会課題を理解し、解決に取り組むことが、リアルなニーズをとらえることになる。現地での人脈作りも含め、留職から得られるものは多い。

「社会をよくするというコンセプトは、実は、どの企業の創業の理念にも入っています。今、行きづまりを感じている企業こそ、原点回帰が必要なのではないでしょうか」。(小沼さん)

創業の理念に込められた社会貢献の意識。顧客も、企業も、社会もよりよくなる価値の提供。まさに近江商人の「三方よし」だ。それがいつからか、理念は「青臭い」と敬遠され、企業内で語られなくなっていった。

企業内で、熱が伝播していく

しかし2人は、営業をしながら気がついたことがある。それは、保守的になりがちな部長クラスの社員でも「御社のミッションは?」と尋ねると目の奥がキラリと光ることだ。今の日本では生活が豊かになりすぎて、事業を通じて社会がよくなる実感をつかみづらい。しかし、途上国であれば、自社の力で社会が元気になる感触を得やすい。

たとえば、パナソニックは、30代の社員1名をベトナムの現地NPOに約1カ月派遣し、電気の行き届かない貧困層家庭のために、太陽光を利用した調理器具の製作コスト削減に取り組んだ。このときの現地での経験を、1人だけのものにするのは惜しいと、パナソニック側からの提案で、日本にリモート(遠隔)チームを結成した。これが、予想外の展開になった。

チームの若手社員4名は事前研修から一緒に参加し、派遣期間中は毎日遠隔でサポートを実施。さらに会社全体で活動を応援できるようSNSを開設した。すると留職者の悩みや質問に多くの社員がアドバイスを送り、最後はベテラン技術者たちも加わっていったのだ。小沼さんたちが、「企業内で熱が伝播していく」のを感じた瞬間だった。

「留職のサポートを終えたリモートチームの若手社員から出たのは、志を持った仲間を見つけた喜びや、自社のモノづくり精神への感動、今後の新規事業創造への意欲だったんです。留学のように経験者が会社を辞めてしまうという不安が払拭された瞬間でした」(小沼さん)

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