人材のグローバル化におけるリスク--急増する産業スパイと新興国人材
日本企業で新興国人材の雇用が急速に進む一方で、外国人社員による産業スパイ、情報流出事件が後を絶たない状況となっている。世界レベルで産業スパイが増加しており、その対策に乗り出す海外に比べ、危機感の薄い日本。
国内の法整備が立ち遅れるなか、グローバル化に向かってひたすら新興国人材を獲得していく企業。今年3月にも工作機械大手ヤマザキマザックにおける中国人社員による情報流出事件が発生するなど、脅威の一旦が明るみに出はじめた。実態がつかめず、声を大にして語りづらい「産業スパイ対策」、人事部門はどうすればよいのか、アジア新興国人材に詳しいネクストマーケット・リサーチ代表の須貝信一氏に聞いた。
--産業スパイに関する報道が増えています。
「産業スパイ」という言葉、30年くらい前、私が小学生の頃ですがよく聞いた気がします。何か古臭い言葉です。それが最近、頻繁に聞くようになってきているのは、なぜか。
30年くらい前に日米欧のコンピューター業界など先進国企業同士がハイテクを争った戦いの一幕が産業スパイでした。もしくは米ソ間の冷戦構造の延長で語られたものでした。その構造がなくなり、しばらくは落ち着いていたけれども、それが最近になって「情報社会」+「新興国の台頭」によって様変わりしている、というところかと思います。
政治的な背景があるかないか別にして「確実に儲かる情報があるなら、手段を選ばず入手しよう」と考えるのは新興国の視点では、さほど不思議ではないかもしれません。
--そもそも産業スパイとは何でしょう。言葉が一人歩きしやすいですよね。
確かに、日本人がやると「情報漏洩」、外国人がやると「産業スパイ」という言葉が使われている気がします。顧客情報よりも技術情報のほうがなぜか衝撃が大きいような気もします。どちらも大事ですが、顧客情報の流出事件は、最近は多すぎて何か麻痺してきているような気がします。