マッキンゼー男とボスコン女、NPOを創る 新世代リーダー 小沼大地、松島由佳
自由の利かない企業の枠組みと、最適化・細分化された業務によって、入社時に持っていた「大きなことをしてやろう」「社会の役に立とう」といった志が小さくしぼんでしまっているように見えたのだ。
そのとき感じた悔しさが基になり、小沼さんは「コンパスポイント」を立ち上げた。これは、若手社会人が集うコミュニティで、さまざまな分野の先駆者を招き、熱く語らう場だ。
そこに参加していたのが、松島さんだった。松島さんは当時、NPOなどで社会貢献に取り組む人が、社会のメインストリームから切り離されている現状に、もったいなさを感じていた。これが後にクロスフィールズを立ち上げる2人の出会いだ。
300人以上が参加し、現在も活動を続けるコンパスポイントのキャッチコピーは、「情熱の魔法瓶」。「暑苦しいですね」と照れ笑いする小沼さんだが、自身の想いや原体験をコンパスポイントへ、そして今はクロスフィールズへと着実に形にしている。
「僕はあらゆる方法で、会社に仕える『仕事』を、熱い志を持って価値を創り出す『志事』に変える人を増やしていきたいんです」(小沼さん)
では「留職」は、企業の社員にどんな変化をもたらすのだろうか。
「異文化の中で修羅場をくぐるような経験が、社員を変えるのだと思います」と松島さんは言う。社名も日本の常識も通用しない場所で、1人の人間として現場に飛び込み、言語も文化も違う人々とともに、プロジェクトを創り出す。そして、きちんと現場で結果を出す。「このような体験こそ真のグローバル人材を育てる」と2人は声を合わせる。
留職の現場で意識する必要があるのは、「本当に現地の人々のためになるのか?」ということだ。こうした感覚は、現地のNPOなどとともに働く中で嫌でも鍛えられる。また、所属によって役割が細分化されている日本の企業内と違い、派遣先ではゼロからすべてをこなさなくてはならない。これに立ち向かい、乗り越えることが、仕事を通じて社会に役立つ喜びを得る「原体験」となる。
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