長男である山田さんの痛ましい自殺から程なく、彼の親であるX氏が、直接の加害者である課長ら3人に対して損害賠償請求訴訟を提起しました。また、水道局を管轄するK市にも、このような事態を放置した責任があるとして、損害賠償請求訴訟を提起しました。
いじめの加害者である課長ら3名の責任が問われるのは当然として、雇用主であるK市に対しても責任追及はできるのでしょうか。
裁判所は、K市の損害賠償責任を認めました。最大のポイントは、裁判所が、K市に「ほかの職員からもたらされる危険についての安全配慮義務」を認めたことです。
知らなかったでは済まされない!「安全配慮義務」の概念
安全配慮義務という概念自体、法律には規定のない概念ですが、一般的には、「使用者に負わされている義務」ということができます。
では具体的にどのような内容なのでしょうか。この裁判では、使用者には、「従業員の職務行為から生ずる危険」に加えて、「ほかの職員からもたらされる生命、身体等に対する危険」についても、加害行為を防止し、「職場における事故を防止する注意義務がある」と判断されているのです。
さらに、裁判所は、結論として、精神疾患に罹患した者が自殺することはままあることであると判断。山田さんの訴えを聞いた上司が「適正な措置を講じていれば、職場復帰し自殺に至らなかった」としたことから、K市の安全配慮義務違反が認められると判断しました。
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