佐藤優(上)「死から逆算して生きよ」 「新世代リーダー」の作法

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サンデル教授のような双方向型の授業は、結局は床屋談義になってしまう。問題は、サンデル教授ではなく、学生の水準にある。大学の助教ぐらいのレベルの人を相手にするならまだしも、学生を相手にしても意味がない。

だから学生は、あるところまでは受動的な形で知識を身につけていくことが非常に重要になる。それがないところで「自分の意見を言ってみろ」といっても、知的にはほとんど意味のないことになってしまう。

仕事でも経験のある上司に2、3人の部下が学ぶみたいな形はとてもいい。ただ、一部の日本企業にあるような、体育会的に「ちょっと若い奴を鍛えてやるか」というのはダメだ。

焼き餅をやいてはいけない

職場の部下や子どもにストリートスマートさを身につけさせるには、「こういう人は面白いよ」というモデルになる人間を見せたほうがいい。それから焼き餅をやかないように、きちんと教育をしておくべきだ。

本物の知識を身につける熟読術・速読術については、『読書の技法』(東洋経済新報社)の中で紹介。

今の偏差値教育、受験競争は焼き餅を助長するところがある。しかも基本的に記憶力の試験だから、反射神経の勝負になってしまう。記憶というのは反復していると、パターン認識されてしまい、外側のものが見えなくなってしまう。その危険性に気づかないといけない。

結局、若い頃にどれくらい本を読んでいるかがカギになる。

たとえば、経済学者の中谷巌さんが、主流派経済学から離れたいちばんの理由は、若い頃、肺の病気をしたときに、お父さんが買ってきた世界文学全集を読んでいるという蓄積にあった。あと竹中平蔵さんも読書家だ。若いときに読書経験をある程度ためていないといけない。

子どもたちには、合理的な受験勉強をやらせるべきだ。

率直にいって、中央大でも、明治大でも、法政大でも、同志社でも、付属中学や付属高校に入るには、ものすごいエネ ルギーがいる。覚えないといけないことがたくさんある。でも大学レベルで、そうした大学に行くのは難しくない。早稲田や慶応にしたってそうだ。中高で早慶 に入るには、本当に血の小便が出るほど勉強しないといけない。

だから、もう少し全体像を見て、「この程度のことならできるだろう」と親が差配してあげないと子どもが疲れてしま う。駆け足するときとゆっくり歩くときとを区別してあげないといけない。子どもの頃から、スイミングスクールに通わされて、サッカーやらされて、そのう え、学習塾にも通わされるというのは、かわいそうだ。

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