佐藤優(上)「死から逆算して生きよ」 「新世代リーダー」の作法

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国、家族、仕事、趣味など、人生の目的をどこに置くかは、各人の価値観によって違ってくる。

佐藤優(さとう・まさる)
作家、元外務省主任分析官
1960年、東京都生まれ。85年に同志社大学大学院神学研究科修了後、外務省入省。在英国日本国大使館、在ロシア連邦日本国大使館に勤務した後、本省国際情報局分析第一課において、主任分析官として対ロシア外交の最前線で活躍。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で東京地検特捜部に逮捕される。09年に最高裁で有罪が確定し、外務省を失職。『国家の罠』で毎日出版文化賞特別賞受賞。『自壊する帝国』で新潮ドキュメント賞、大宅壮一ノンフィクション賞受賞。『獄中記』『交渉術』など著書多数。最新刊『読書の技法』が12万部突破

時間の有効配分の問題として、仕事でトップになることと、家庭生活とを、両立するのは非常に難しい。ゼロサムゲー ムとまでは言わないけれども、構造は限りなくゼロサムに近いと考えたほうがいいと思う。だからトップになった人たちは、人生のどこかで、家庭生活や趣味を 犠牲にしている。すべての面で幸せを望むのは無理だ。

そして、上に行けば行くほど、偶然の要素が強くなる。物書きでも通訳でも何の世界でも、トップになる人の共通点は運がいいことだ。運の要素がたぶん99%だと思う。ただし、残りの1%に実力がないと絶対に運をつかめない。

裏返すと、上位10%に入るために、運の要素はほとんど関係ない。ほとんどが実力だ。だから、上位1割に入るため に努力することは、絶対無駄にならない。大体の企業において、中間管理職までは実力でいける。たぶん、執行役員も実力でいける。そこから先は運と巡り合わ せで決まる。

李明博の生き方から学べ

ビジネスパーソンにとって、韓国の李明博(イ・ミョンバク)大統領の生き方は参考になる。彼の出世モデルから学べることは非常に多い。

彼は徹底したリアリストだ。上司を選べないことを理解し、上司に合わせていくことによって、40代にして現代建設の会長にまで上り詰めた。大統領としての評価はさまざまだが、大統領になるまでのプロセスにおいて、努力と運の両方をいちばんうまく回してきた人だといえる。

案外見過ごされているのは、彼が非常に熱心なプロテスタント、カルヴァン派のキリスト教徒だということだ。「仕事 は他者のためにやる」というモラルが非常に強い。これがやっぱり出世のコツだ。逆説的だが、利他性を重視することで、それが自分に返ってくる。「情けは人 のためならず」という構図だ。

大切なのは、自分のことと、会社のことと、国家のことを重ねるように、同心円的な心理を持つことだ。最近は、新自 由主義批判が行きすぎている。競争に疲れてしまって、若い人たちが競争から簡単に降りすぎるし、自分の狭い世界を簡単につくりすぎてしまっている。それに 対しては警鐘を鳴らしたい。

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