ヤクルト真中監督「開き直れないから負ける」 部下に「本当の意見」を言わせる空気を作れ

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それに私は選手の生活を握っています。私が試合に使うか使わないかでその選手の給料が決まるわけです。特定の選手と会話をすることを、面白く思わない選手も中にはいるでしょう。バレンティンのようなバリバリのレギュラーのような選手と大笑いしながら話す、というのは例外として、基本的には選手とは会話をしません。私も人間ですからね、本心は会話をしたいんですよ。それでも、チームがよい方向に進むための行動を選びます。

ヤクルトスワローズのマスコットキャラとして人気の高い「つばみ」

そうはいっても、シーズン中は自分自身も方向性を見失うときが何度もきます。チームの勝敗、相手チームの状況、シーズンの大局的な流れ、コーチ陣との連携、選手の調子、誰を二軍に落として誰を上げるかなど、さまざまなことを同時に考えますから、視野が非常に狭くなるときがきます。そんなときは、とにかく自分を俯瞰してみることに徹します。私の場合は、自分の体を神宮球場の客席に移動させ、そこからヤクルトスワローズの監督である真中を見つめます。そうすると

「お、立派に監督やっているじゃないか」

「そんなに硬くなるなよ。シーズンは長いじゃないか」

というように、不思議と抱えている問題も割と大したことはないんじゃないかと思えてきます。こちらが連敗していて、対戦相手も連敗しているときなどは、自分の采配そっちのけで相手監督の采配を注意深く観察したりします。

「まさかここでバントはしないよな。あっ! したよ! ウソだろ」

と、びっくりするときがあるのですが、連敗中は恐らく自分もそのような采配をしている可能性が高いのです。たまには相手の監督になってみると、それによって自分が見えるときもありますね。

自分なりに自身を俯瞰する方法を見つけよ

なので、自分を俯瞰してみること。どんな方法でもいいですから、自分なりの俯瞰の方法を見つけてみると、視野が狭くなったときには効果的です。

プレッシャーや責任が多くかかると、人は視野が狭くなりがちです。

なぜ、そうなるのでしょうか。それは、開き直れないからだと思うんです。

私はプロ野球の監督という仕事をしていますが、いい意味で開き直ることができています。自分のやりたいようにやって、それで結果がでなくても、「人生で一度でもプロ野球の監督をやれたんだから、すごいことじゃないか」と思って、開き直るようになりました。

目の前にあるプレッシャーや責任を何とかしようともがき苦しむより、今の立場で物事を考えられることに喜びを感じ、そこでしかできないことだけにフォーカスするようにしています。

(インタビュー・テキスト:高森勇旗)

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アルファポリスビジネス編集部

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