26歳でホンダを辞めプロ野球に挑む男の真実

安定は捨てられても、「夢」は捨てられない

一握りのスター選手が脚光を浴びる、プロ野球の世界。大企業という安定を捨ててでも、夢を選んだ阿部寿樹、現在の心情は?(写真 : 日刊スポーツ/アフロ)

プロ野球選手は「夢を売る仕事」だといわれる。

少年ファンからはあこがれのまなざしを受け、女性ファンからは嬌声を浴び、破格の報酬を受け取る。野球をやった経験があれば、誰もが一度はなりたいと願ったことがある職業に違いない。

大企業という安定を捨てて、プロの世界へ

今秋のドラフト会議では、社会人野球チームでHonda(ホンダ)に属する阿部寿樹という内野手が中日ドラゴンズから5位指名を受けた。あの落合博満GM(ゼネラルマネージャー)が1年以上前から高く評価していたという大型内野手は、契約金5000万円、年俸1000万円(金額はいずれも推定)の条件で中日と仮契約を結んだ。

プロ野球選手で脚光を浴びることが許されるのは、ほんのひと握りのスターだけだ。プロ野球選手は個人事業主であって収入は安定せず、2軍選手の年俸は普通のサラリーマンと変わらない。

一方、アマチュア最高峰である社会人野球は、ホンダのような大企業がチームを所有していることが多い。プレーヤー引退後も社員として安定した収入が得られるため、中にはせっかくプロからの誘いがあっても企業チームに残留する道を選ぶ選手もいる

ホンダは言わずとしれた世界的企業。その安定した会社員という地位を捨てて収入が乱高下する個人事業主へ。さらに、阿部は大卒4年目、2016年には27歳になる「オールド・ルーキー」でもある。ドラフト指名されることは野球人として名誉なことだが、入団を決断するまでにさまざまな葛藤があってもおかしくない。

阿部のケースを通して、プロ野球選手になることの「夢と現実」を追ってみよう。

「僕は第一にリスクを考える性格なんです」

阿部寿樹はアスリートとして、お世辞にもクールとは言いがたい言葉をサラリと口にした。

やや垂れ下がった目尻が、いかにも穏やかそうな印象を与える。身長185センチの立派な体とはうらはらに、阿部の口からはネガティブな言葉が続いた。

「なにごとも、人よりも自信がないので……。たとえば、よく『守備に自信があるでしょう?』と聞かれるんですが、僕としてはなんとも言えなくて」

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