ショッピングモールには理想の街の姿がある 東浩紀×大山顕「実は社会的弱者に優しい」
日本に限らず、世界中に乱立するショッピングモール。商業施設だけでなく、駅も病院も図書館も、ショッピングモール化が進んでいる。それははたして健全なことなのか。作家・思想家の東浩紀氏とフォトグラファー・ライターの大山顕氏の対談をまとめた『ショッピングモールから考える』(幻冬舎新書)の一部を抜粋して、ショッピングモールが先取りする街、都市の姿を考えたい。
都市はグラフィックにすぎない
大山顕(以下、大山):今度は僕からプレゼンさせていただこうと思います。バンコクに行ったときの話です。バンコクは異国情緒豊かなところです。野良犬がたくさんいたり、絡みあった電線がダイナミックだったり、神棚のようなものがそこここにあったり……と観光を楽しみました。
しかし、いちばん強烈だったのはショッピングモールなんです。僕は大学の卒業論文で、工場の構造を残して街づくりに生かす、という提案をしたことがあります。僕は1972年生まれで東さんとほぼ同じですが、僕たちの世代はリアルタイムに公害を経験していないので、あっけらかんと「工場ってかっこいいよね」と言えるようになると思っていた。
これと同じことが、たぶんショッピングモールにも起こる。僕が工場を撮り始めたように、ショッピングモールを撮る若いモール写真家が出てくるはず……というわけで慌てて写真を撮り始めたのですが、ショッピングモールを撮るのって難しいんです。なぜかというと、僕はずっと外観を撮っていたんですね。けれど、ショッピングモールで大事なのは内装です。
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