ショッピングモールには理想の街の姿がある

東浩紀×大山顕「実は社会的弱者に優しい」

:つまり外部がない空間ということですね。これはゲンロン友の会の会報に書いたことがあるんだけど、2012年にカリブ海クルーズに行ったんです。

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クルーズというと日本では高価というイメージですが、米国ではそうでもないんですね。クルーズは、キューバ情勢が安定した1980年代以降、カリブ海で一気に大衆化しました。僕が参加したのもそういう大衆化したクルーズで、ロイヤル・カリビアン・インターナショナルという最大手の海運会社が手がけるものです。

せっかくだからということで「アリュール・オブ・ザ・シーズ」という世界最大の客船に乗りました。乗員客員合わせて7000人が乗船できて、内部には巨大なショッピングモールもある。

行って驚いたのは、こういった大衆的なクルーズには社会的な弱者がすごく多く参加していることです。高齢者も多いし、知的障害者も多い。肥満で動けなくなったような人もたくさんいる。彼らは、さまざまな制約で、一般の娯楽を楽しむことができない。けれども、一度船に乗ってしまえば、そのなかにすべてがあって街ごと旅先に移動していく。

アリュール・オブ・ザ・シーズの全幅は66m、全長は361mにも及ぶ

大山:リタイアした人たちが海の旅に出るという伝統もありますよね。

:クルーズ船はまさに動くショッピングモールです。

ちょっと面白かったのは、船のなかを歩いていると、制服を着たスタッフが僕たちの写真をばんばん撮るんですね。部屋番号も聞かれないので、どうするつもりなのかと思っていると、じつは全部顔認証されている。だから、フォトブースに行ってルームキーを挿すと、「あなたの顔が写っている写真が何十枚ある」と表示されるんです。

全部CD-ROMに入れると2万円で、10枚選んでブックにすることもできる。日本ではスタッフが一枚撮った写真を2000円で売ったりしているけれど、このサービスでは勝手にどんどん撮影して、ファイルにしちゃうんですね。それでいちいち、「この写真を買いますか? 削除しますか? 本当に削除しますか?」と聞かれる。確かに削除するのも抵抗があるので、ついつい買ってしまう。実に洗練されたシステムでしたね。

大山:いつの間にか撮られているんですね。そういうシステムにおいて量は大切ですよね。

パスポート不要、ルームキーのみ持っていればいい

:ほかにもカリブ海クルーズはパラダイムシフトの連続でした。僕が乗った船はジャマイカやメキシコにも立ち寄ったんですが、なんと入国にパスポートが要らないんです。ルームキーだけ持っていけばいい。

大山:それはすごい。海運会社が国の制度を変えてしまっているんですか。

:詳しいことはわからないのですが、普通の飛行機での入国とはまったく違う。お客さんたちもみんな慣れたもので、Tシャツや海パンだけで平気で船を降りる。降りたら目の前はビーチ。でも多くの乗客は、そこがどこの国家に属している土地かもわかっていないかもしれない。まさに外部がないのです。その徹底ぶりは本当にすごいと思いました。

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