ショッピングモールには理想の街の姿がある

東浩紀×大山顕「実は社会的弱者に優しい」

たとえばロードサイドの郊外店だと、目につくのはファサードと看板くらいで、そのまま駐車場に入って内部に進むので、ユーザー側は建築の外観を意識しない。

吹き抜けが印象的なバンコクのショッピングモール

内装を見てみると、やはり吹き抜けが印象的ですよね。バンコクのショッピングモールは、日本以上に吹き抜けがすごい。そういえば、今日のためにショッピングモールの吹き抜けを撮ろうと思ったんですが、ことごとく警備員に止められました。東さんから、ホームレスが入れる空間が公共的なのかという問題提起がありましたが、バンコクはさらに警備が厳しい。モールの入口で金属探知機のゲートを潜らないといけないのです。まさに「モール共和国」への入国審査みたいな感じでした。

地下から捉えたターミナル1階の様子。「ネオンzone」「金魚」など、なにを伝えたいのかわからない謎めいた看板が並ぶ

東さんがおっしゃる「モールのなかでルールが統一されている」で言うと、自分も含めていろいろな国のさまざまな人種が訪れていたんですけど、みんな振る舞いが統一されている気がしました。国の文化よりも強い「モール的作法」とでもいうべきものに。これはすごく面白いと思いました。

あとバンコクでどうしても紹介したいのは、「ターミナル21」というショッピングモールです。これは2011年にオープンした新しい大型店舗で、「ターミナル」という名のとおり、空港のターミナルをモチーフに、各階がそれぞれのテーマとなる街を模してつくられているんです。1階は東京、2階はロンドン、3階はイスタンブール。とくに1階の東京がすごい。

東浩紀(以下、東):僕がツイッターで大山さんに教えたんですよね。2013年にバンコクへ行ったときに見つけたのですが、ここにはショックを覚えました。ものすごくキッチュなんですが、それだけじゃない。外国人が日本をイメージしたとき出てくる独特のキッチュさを、もう一度さらに外国人が自己パロディで模倣したような入り組んだ構造をしていて……。外国人が抱く間違った日本像を理解したうえで、あえてそれをシミュレートしている。

大山:ああ、こういう間違いってあるよね……と思うようなところを、ピンポイントに突いてくる。日本人のデザイナーがかかわっているのかもしれませんね。

提灯はほんの一例。ほかにも「貴重な経験」や「私は君に大切な」といったおかしな文字列があちこちに見られる

:これ、日本人がかかわっていないとしたら逆にすごいですね。すべての階がそれなりによくできているのですが、東京の階が特にすごい。噓が徹底されていて、なにひとつ正しくない。看板も悪ノリだらけ。この提灯には「嬉嬉として幸せ」と書かれていますが、むろんこんな提灯は日本にはない。

大山:トイレに続く廊下には松の木が生えていたり(笑)。

:そもそもカタカナもかなり噓。こういうのを日本にもつくってほしいなあ。

大山:すごく楽しいですね。

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