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中国の習近平国家主席が1月半ば、中東を外遊してサウジアラビアとイランを歴訪した。習主席の外交姿勢はこれまで慎重とみられていたが、今回の中東訪問は積極姿勢への転換を印象づけた。
昨今、中東の2大国であるサウジとイランの関係は悪化しているが、中国が積極外交に転じれば、中東情勢に米国よりも建設的な影響を与える可能性がある。
米外交問題評議会のリチャード・ハース会長が指摘するように、現在中東は直接戦争と代理戦争とが区別できないほどの、新たな「30年戦争」に突入しつつある。その混乱の経緯をたどると、行き着くのは2003年の米国によるイラク侵攻だ。
サウジとイランの綱引き
当時、米国はイラクのフセイン体制を打倒し、既存のスンニ派主導体制からシーア派主導体制へと国を一変させた。しかし、その一連の流れが混乱の契機となってしまった。地域の勢力バランスがシーア派の大国イランに傾いた結果、スンニ派の大国サウジが、シーア派諸国に包囲されることを危惧したのだ。現在のシリア内戦にイランとサウジがかかわる背景にはこうした事情がある。
15年夏、イランは欧米主要国と核問題で最終合意し、経済制裁が解除されることになった。制裁が解除されれば、イランが長年抱いてきた地域大国になるとの野望も現実味を帯びてくる。サウジにとっては、イランの野望をどう封じ込めるかが懸案となっている。
もちろんサウジもイランも直接、戦火を交えるつもりはない。両国の戦略は他国をけしかけ、支援することで自国の勢力を強めることだ。これは時に、過激派宗教組織など超国家組織による暴力に油を注ぐ結果となる。その帰結がイスラム国(IS)の台頭である。
中東情勢には米国、フランスやロシアといった大国が深く関与している。背景にはおのおのの事情があるが、昨今、新たに関与を深めようとしている国もある。中国だ。
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