工藤公康「理想のリーダー論などありません」

"後悔だらけ"の野球人生から導き出した答え

工藤 公康(くどう きみやす)/1963年、愛知県生まれ。1981年ドラフト6位で西武に入団。歴代最長となる29年間プレーして、優勝14回と日本一11回を経験し、「優勝請負人」と呼ばれた。日本シリーズMVPを2回獲得したほか、数々の栄冠に輝く。2011年引退を表明。2015年から福岡ソフトバンクホークスの監督を務める。2016年野球殿堂入り

野球は、ただ打って走って投げてというだけじゃない。もちろん技術的なことも重要だけど、長く続けようと思えば、他人より体や精神力が強くなければいけない。それって、練習の中で培っていくものだと僕は思うんですよ。

練習をしっかりやってくれれば、できなかったことができるようになったり、今見えないものが見えるようになったり、もっと長くやる方法も見つかったりする。でもその途中でやめてしまうと、すべて中途半端に終わってしまう。選手にはそうなってほしくない、長くやってほしいという気持ちだけで僕はやっているんです。

――そこまで選手のことを考えているのですね。

球団としては当然、優勝したら2連覇、次は3連覇という目標を掲げてきます。これは選手の人生において短い目標としてはすごく大事で、人というのはやはり目標がないとそのためにどうするか考えないと思います。

ただ、選手の長い人生の中で、野球ができるのはせいぜい20~25年くらい。短い野球人生をいかに過ごすかによって、その後に自分にできることがわかってくるし、その後の人生が変わってくる。だから、野球をとことん突きつめてやることが何よりも大事だと思いながら、いつも選手を見ています。

「どこを向いて野球をやっているか」を見ている

――キャプテンは何を基準に選ぶのですか?

チームというのは、監督が一言発すればそれに沿っていくというものではなくて、選手には選手個々の考え方や意見、それぞれが描くチームがある。僕も現役のときはそうでした。監督やコーチがこういうチームにして、こうなって……と話すのではなく、その役割は選手のいちばん身近にいるキャプテンが担う。

例えば、僕が内川くんをキャプテンに指名したら、内川くんがどんなチームにするか、自分なりに理由づけをして考えていく。どんなチームにするのかは選手が作っていくもの。監督がチームを作るというのは違うと、僕は思っています。

――リードする人をキャプテンに指名して、あとはその人が考えると。

そうです。自分で考え自分で答えを見つけ出す、そこにたどり着くまでの過程が大事。答えを示すのは簡単ですが、その過程で何を考え何を思い、どう行動してその結論まで至るかというところが非常に重要で、そこにはやはり人としての意思が絶対に入ってきます。

――個々の意思がある中で、チームとして成果を出すために、組織はどうあるべきでしょうか?

組織のあるべき論ではなくて、僕は個々の能力をどう引き上げてあげるかを考えています。それによって個々のモチベーションが上がり、皆の向いている方向が一つになる。

皆の意思疎通ができているかどうかは、どこを向いて野球をやっているかでわかる。キャプテンの一言で皆そっちを向いてやるのか、キャプテンが言ったとしても違う方向を向いているのか。それは、選手の顔を見ればわかります。今日はこうやっていくぞという皆の意思が一つになることが大切だと考えています。

次ページ目標設定はチームの雰囲気を見て臨機応変に
ビジネスの人気記事
トピックボードAD
関連記事
  • 仲人はミタ-婚活現場からのリアルボイス-
  • コロナ後を生き抜く
  • ぐんぐん伸びる子は何が違うのか?
  • ソロモンの時代―結婚しない人々の実像―
トレンドライブラリーAD
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
トレンドウォッチAD
コロナ時代の勝者と敗者<br>不動産 熱狂の裏側

実体経済の悪化を尻目に、国内外から熱い視線が注がれる日本の不動産。業界の雰囲気とは対照的に、上場不動産会社の株価は軒並み軟調です。コロナ後の新常態で誰が笑い、誰が泣くのでしょうか。現場の最新情報を基に不動産市場の先行きを展望します。

東洋経済education×ICT