工藤公康「理想のリーダー論などありません」 "後悔だらけ"の野球人生から導き出した答え

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――積極的な失敗は構わないし、落ち込む選手には「悩むな」と声をかけると聞きました。

子どもの頃から100点しか取ったことない人間はいないし、物を落として割ってしまうこともある。そういうことがあって、次は気を付けようと学んでいく。失敗するなというのは簡単だけど、じゃあ「工藤さん、失敗したことはないのか」と聞かれたら、「失敗だらけだよ」と答えるしかないので(笑)。

練習したからといって、毎回バントが成功するとは限らない。皆、練習すればうまくなって失敗しないと思ってるけど、違うんです。唯一、自信を持つには、延々と試合の中で成功し続けるしかない。自信をつけられる場所というのは、実戦の中にしかないんですよ。

その実戦の中で自信をつけようとしてるのに、ベンチを見ながら野球をするというのは、いちばんやってはいけないことです。

端的に方向性を示せば、選手が枝葉をつけてくれる

――なるほど。

人は失敗するもので、そこから自信を失くしたりするもので、そういうものが少しでも取り除けるんだったら、それをしてあげたほうがいい、と思ってるだけです。

だから普通に「失敗したんだったらさ、明日練習すればいいじゃん」って。失敗する失敗しないというより、「とにかく練習やろうよ、その中で失敗しても構わないから」と。エラーしない人はいないでしょ、10割打つ人もいないでしょ、投げたら全部三振取って勝つ人もいないし。だから、それをやれって言うほうが無理です。

――工藤さんはさまざまな監督のもとで野球をされてきましたが、例えばホークス時代、王監督から学ばれたことはありますか?

印象に残っているのは、(チームが低迷した1996年にファンから)バスに卵を投げつけられたとき、チームが弱いから……などと一切選手に言われなかったこと。言われないことで選手それぞれが考えて、オレたちこのままじゃダメだと思ったんですよね。言われると、言われた瞬間に「何言ってんだ」ってなっちゃうけど(笑)。

言うことがすべてではないし、言わないことがすべてでもない。僕がなるべく短く端的に「こうするよ」と方向性を示せば、あとは選手が枝葉をつけてくれる。本当に勝ちたいと思えば、選手がグラウンドの中で精一杯動く。疲れた様子でおかしいなと感じる選手には「どうしたんや」と声をかけて、「疲れてます」と言ったら「そっか」と。疲れて打てなくてもいいから試合に出てくれと言う選手もいれば、ちょっと休んでゆっくりしようかと言う選手もいる。

――選手の様子をよく見てるんですね。

僕はピッチャーでしたし、バッターの見方や配球、攻め方をはじめ、野球界の中でいろいろ学ばせてもらいました。こういうのって心理学みたいなところがあるんですよ。そうやって、また違う自分の能力を発掘できる。

例えば、ピッチャーはスピードにこだわりがちだけど、ボールが遅くても抑えられることはあって、早けりゃいいってもんじゃない。本人のこだわりは大事にしながらも、速い球は体が強くないと投げられないから、じゃあ次は何をしなきゃいけないよねと話したり。日々、勉強ですね。

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