高血圧と人類、その長い戦いに訪れた「転機」

人と病の100年、治療・創薬はどう変わった?

心臓は1分間に約70回(1日10万回)、収縮と拡張を繰り返しているポンプであり、血圧にはちゃんとした役割がある。血流に載せて全身にくまなく酸素・栄養素を運び届けると同時に、二酸化炭素や老廃物の除去を行わなくては、生命は維持できないのだ。

では、血圧が高いと何が悪いのか。実際、高血圧の域に入っても、痛くも痒くもない。しかし、持続する圧力は動脈硬化を加速させる。「水まきホースの出口を絞ると内部の水圧が高まって遠くに飛ばせるが、ずっと続けると、劣化が早まってボロボロになるようなもの」(慶應義塾大学医学部循環器内科・福田恵一教授)という。

ただでさえ、血管は老化するので、大半の人は加齢と共に血圧が上がり気味になる。さらに、高血圧や糖尿病などで動脈の血管の内皮が傷ついた所に悪玉のLDLコレステロールなどが沈着すれば、その内腔は狭くなって血流が滞り、血圧上昇につながる。

寝たきり要因のトップも脳卒中

高血圧は脳卒中のリスクを確実に押し上げる。健常人の脳卒中による死亡リスクを1とすると、収縮期(最大)血圧140~160mmHgの人で3倍、180mmHg以上の人では7倍に跳ね上がる。

脳卒中(脳血管疾患)は、1980年までは、日本の死因のトップだ。今も、寝たきりとなる原因では最も多く、寝たきり患者の4人に1人が脳卒中によるものだ。さらに、動脈硬化から心筋梗塞・脳梗塞に至るリスクも高め、腎臓にも負担をかけて腎不全にもなりかねない。

「高血圧」と診断されるのは、血圧が正常とされる範囲を超え、収縮期(最高)が140mmHg以上、または拡張期(最低)が90mmHg以上である場合で、上と下は、どちらが高くてもいけない。この基準によれば、日本人の3人に1人、約4300万人が該当する、堂々たる“国民病”である。

そのすべてに薬が必要というわけではない。「ちょい高め」ぐらいなら、落ち着いて経過観察することだ。血圧は季節により(冬は高め)、1日の時間帯により(朝は高め)変動し、さらに、家庭ではリラックスできるので、医療機関で測定するより、低めに出ることが多い。

血圧が高めと分かったら、まずは家庭用血圧計を買って、できれば1日2回落ち着いて測り、1カ月は続けて記録してみることだ。レコーディングダイエットと同じで、「記録するだけでも振り返りになって、高血圧が改善される人も少なからずいる」(福田教授)。

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