アメリカで頻発する「保険危機」とは何なのか これからは日本でも起こるリスクはある

✎ 1〜 ✎ 26 ✎ 27 ✎ 28 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
米国では保険に入りたくても入れない「保険危機」は、日常茶飯事です(写真:szefei / PIXTA)

入りたいのに必要な保障額まで入れない保険があります。地震保険はそのひとつです。必要な金額の半額までしか入れません。だから地震で家が全壊しても、地震保険から支払われる保険金で壊れた家を建て替えることはできません。これは、地震による損害額があまりにも大き過ぎるため、保険会社がリスク全額を引受けられず、加入金額を制限しているためです(「地震保険、掛け金が高いのに保障が低いワケ」)。

原子力事故による賠償責任のリスクも同様です。東日本大震災での、福島原発事故に伴う東京電力の巨額の賠償問題から分かるように、あまりにもリスクが大き過ぎると保険会社は引受けすることができません。

保険危機とはなんだろう?

この連載の過去記事はこちら

テロ保険も同じです。9.11同時多発テロ事件を契機に、テロの損害額が想定できないほどの金額になることに日本の保険会社は驚きました。それ以降、テロ保険の引受けを止めています。2020年の東京オリンピックでは、テロのリスクにも備えねばなりません。そのためには、テロ保険の引受けを再開しなければなりませんから、政府と損保会社による検討が始まっています。

このように保険会社の「リスク引受余力」のことを、業界内では「キャパシテイ」と呼んでいます。キャパシティが不足すると、保険会社は引受けを制限したり停止したりすることになります。

地震はともかく、テロや原子力事故は一般消費者には馴染みのないリスクですから関心は薄いかもしれません。しかしこれが、医療保険、自動車保険、火災保険のように日常生活で必要な保険だとしたらどうでしょうか。必要な保険に入りたくても入れない、というかなり深刻な状況となります。これが「保険危機」です。

次ページ米国では「保険危機」が日常茶飯事で起きている
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事