あの人が「うつ病」を自覚できない最大の理由 頑張りすぎて治療しないと最悪は命を落とす

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認めたくない気持ちはわかりますが、放置してはいけません(写真:わたなべ りょう / PIXTA)

「夫がうつ病かもしれないのですが、私がいくら言っても病院を受診しようとしてくれません。一体、どうしたらいいでしょうか?」

40代男性会社員の妻から、こんな相談を受けたことがある。その男性会社員は職場の人間関係で悩み、不眠や食欲不振など家族から見て「うつ病では?」と疑われるような症状がいくつか見受けられていた。そこで心配した妻が本人に精神科や心療内科の診察を勧めてみたところ、「俺を精神病棟に閉じ込める気か!?」と反発され、それをまったく聞き入れないのだという。

このケースに限らず、自分がうつ病かもしれないのにそれを認めず、みずからをいじめ続ける「うつ病予備軍」は多い。家族や会社の同僚など周囲から心配されても、頑として治療を始めない人だ。あなたの周りにもいないだろうか。

数百万人がうつ病を自覚できていない

この12月から、改正労働安全衛生法に基づく「ストレスチェック制度」が多くの企業や役所などで義務付けられた。業種を問わず、常時使用する労働者が50人以上いる事業所は、従業員に対してストレスの程度を計測するアンケートのような調査を、毎年1回以上は実施しなければならない。つまり身体の健康診断と同じように、心の健康診断が義務付けられた。

これをめぐっては、「メンタル不調者をあぶり出そうとしているのではないか」という指摘もされている。確かにそうした側面も否定はできない。ただ、心の専門家の立場から見ると、そのリスクよりもはるかに重要な問題に手をつけるための制度であることは間違いない。それは何か。メンタル不調を患っている人に対し、その「自覚」を促すことだ。

そもそもどんな病気でも特別なケースを除いて、自覚がないのに病院を受診する人はいない。うつ病の治療においても同じだ。「当たり前だ」と思うかもしれないが、その当たり前が実現されないからこそ、うつ病の問題が解決しない。

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