「休めない」日本人の生産性が著しく低い理由 従業員の健康に気を配らない企業は負ける
「ダラダラ残業しているヤツのほうが、残業手当も稼いでいるし、上司のウケがいい」
「会社から有給休暇をすすめられても、こんな忙しさでは休めるワケがない」
筆者は精神科医として、大学病院の診療だけでなく、産業医として企業のメンタルヘルスの問題にも取り組んできた。患者からよく聞かされるのが、冒頭のようなぼやきだ。日本における労働時間の長さと非効率性を、端的に物語っているセリフである。
厚生労働省が10月中旬に発表した「就労条件総合調査」(2015年)によれば、常用雇用が30人以上の4432法人のうち、2014年の年休取得割合は、47.6%に過ぎなかった。100%近い国もある欧州や70%台のアメリカなどと比べても、日本は依然として先進国の中では最低水準を記録し続けている。
「休む=悪」という空気が職場に蔓延している
日本企業には多かれ少なかれ、総じてこのような風潮が蔓延している。「休む=悪」という、日本独特の「職場の空気」は、不眠や睡眠不足、あるいはうつ病といった心の病気の温床となっている。臨床を行っていても、薬の処方や多少話を聞いたぐらいでは改善せず、仕事環境をなんとかしなければ治療に結びつかない場合も多い。
経済的な理由ももちろん大きいだろう。しかしそれよりも
・「みんなが忙しいのに、自分だけ休むのは申し訳ない」という自責感や罪責感
・「みんなが忙しいのにお前だけ休むなんて」という攻撃性
といった感情的な問題が潜んでいることが、休みをとりづらくしている遠因とも考えられる。
感情的な要因には、科学的根拠など事実を突きつけていくのが、もっとも理解されやすい方法である。休憩から得られる利益を、科学的に検討してみたい。
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