あの人が「うつ病」を自覚できない最大の理由 頑張りすぎて治療しないと最悪は命を落とす

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確かに、ある程度、他者からの評価は必要である。給料をもらって生活をするには、会社から見捨てられるわけにはいかないだろう。ただ「治療の必要性」を認めない限り、遅かれ早かれ、その時はやってくる。職場のストレスを我慢し続けた30代の男性会社員は、「突然、体がいっさい動かなくなった」と言う。心身の叫びを無視し続けたツケは大きい。

うつ病を自覚するかどうか?は本人次第

ストレスチェック制度は、会社側に課せられた義務である。厳密に言うと、労働者側にチェックを受ける義務はない。労働者はチェックや医師の面談を拒むこともできる。結局、ストレスチェック制度は単なる仕組みであり、その仕組みによって自分を守るかどうか、最終的な判断は本人に委ねられる。

自身のうつ病に気付く一つの指標が「残業時間」である。長時間労働でうつ病発症のリスクが2倍になるという研究結果も出ている(米科学雑誌プロスワン 2012)。こういった客観的で明確な基準があるのだ。思い当たる節があるなら、ストレスチェックを受験し、その結果を真剣に受け止めてみてはどうだろう。

実は、私の姉はうつ病を苦に自殺している。やはり真面目で責任感が強く、仕事もできるほうだったが、徹底的に「頑固」でもあった。最後に話をしたとき、「自分さえ我慢すれば何とかなる」と呟いたのを覚えている。周囲に迷惑を掛ける自分を最期まで許せなかったのだろう。しかし、残された家族としては「迷惑を掛けてでも生きていて欲しかった」、そう思わざるを得ない。

「自殺」は深刻な問題である。減少傾向にあるとはいえ、いまだ毎年2万5000人以上が自殺している。特定できた動機のうち、「うつ病」は常にトップだ(警察庁自殺統計 2014)。彼らは決して死にたかったわけではない。命を投じても解放されたいと願うほど苦しかったのだ。

会社の評価は大事だ。周囲に迷惑を掛けないに越したことはない。ただ、いずれも「生きていればこそ」の話である。「治療が必要かもしれない」という自覚は、生きるための第一ステップなのだ。

本記事のタイトルを一見して、あなたは誰を想像したのだろう。ひょっとしたらあなた本人かもしれないし、誰か思い当たる「あの人」がいるかもしれない。もし、「あの人」が、「治療が必要かもしれない」という自覚をためらっているのなら、あなたが背中を押してみてはどうだろう。人生は長い。潔く足を止めて治療に踏み切ることが、残りの人生を楽しく生きる最短の道であることを伝えてあげてほしい。

片田 智也 心理カウンセラー/LOGOSCOPE 代表

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かただ ともや / Tomoya Katada

大学卒業後、20代で独立するがストレスから若年性緑内障を発症、視覚障害者となる。同年、うつ病と診断された姉が自死。姉の死の真相を知るため、精神医療の実態と精神療法を探求、カウンセラーへと転身する。教育や行政や官公庁を中心にメンタルヘルス実務に参画し、カウンセリング実績はのべ1万名を超える。心理カウンセリングから、経営者、アスリートのメンタルトレーニングまで、メンタルの問題解決に広く取り組んでいる。著書に『メンタル弱い」が一瞬で変わる本 何をしてもダメだった心が強くなる習慣』(PHP研究所)

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