バブル経済期の東京で大いに働いて遊んだ経験のある朝子さん。20代なのにホテルのバーでボトルキープしていて、それを飲んでいても見知らぬおじさま客から一杯ご馳走してもらえる、というような派手な毎日だった。恋愛する人も「インチキ男、チャラ男」が多かったと明かす。
「手堅くなくていい加減な人のほうが付き合っていると楽しいから。口が上手くて、レディファーストをさっとやっちゃうような人。そういう意味では、今の夫はタイプじゃないですね。誕生日に花束を買ってくるみたいな気遣いは一切しませんから」
では何がよかったのか。同じく離婚経験者である和弘さんは、他人に多くを期待したり要求したりすることがない。その静けさと落ち着きが朝子さんを「ホッとさせる」ようだ。
夫の転勤に帯同するという「一大決心」
「彼には(前妻との間に)子どもはいません。私と再婚する話になったときに、息子との関係についてこう言ったんです。自分は子どもがいないから彼の父親にはなれないけれど、家族としてつながっていけたらいいなと思う、と。それを聞いて、すごく正直で気負いがない人だなと感じて、気が楽になったし安心しました」
和弘さんは建設会社の正社員であり、朝子さんと結婚してから地方都市に転勤することになった。一方の朝子さんは、自ら経営する編集プロダクションで片腕となってくれていた女性が出産で休業するという節目を迎えていた。
今まで仕事と子育てを中心に突っ走って来たけれど、このへんで一度休んでもいいかもしれない。朝子さんは50歳を手前にして初めてそう感じたと振り返る。
「地方に一緒に来てくれないかと夫に頼まれたとき、外で働かなくてもいいなら行くよ、と答えました。彼は超喜んでいましたよ。簡単だなこの人、と思いましたね(笑)」
朝子さんも気づいているはずだが、和弘さんも若い頃はこんなに可愛らしい男性ではなかっただろう。夫の転勤先に妻がついてくるのは当たり前だ、ぐらいに言っていたかもしれない。結婚相手の生活や心情をできるだけ尊重し、相手が自分に歩み寄ってくれたら心から感謝する――。簡単なようで難しい心構えだ。特に男性は手痛い経験をしなければ身に付かない人が多いと思う。
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