人生初めての専業主婦業は「めちゃ楽しかった」と朝子さん。知り合いのいない地方都市での生活。午前中いっぱいかけてじっくりと家事をやったら、午後はすべて自分ひとりの時間だ。スポーツジムで3時間も運動したり、ワインスクールに通ったりする生活を満喫した。
「昔は、都会でたくさんお金を稼いでたくさんお金を使うのが楽しかった。周りもそんな人ばかり。でも、いまは(お金ではなく)時間がたっぷりある環境が本当に豊かだと感じています。家事ってこんなにも創造性と発展性があるものだと、この歳で初めて知りました。好きな料理はじっくりやれるし、洗濯物も丁寧にたためる。味噌は手作りですし、気に入っている綿のシャツは手洗いしています」
この先も長く生きていたらまた気持ちは変わるかもしれない、と言いつつ、今のところは編集・ライター業よりも主婦業のほうに比重を置いている朝子さん。和弘さんの転勤が終わって一緒に東京に戻って来ており、昔の仕事仲間に連絡を取りさえすれば「都会でたくさん稼いでたくさん使う」生活に復帰することも可能だ。選択肢がひとつだけではないところが朝子さんに余裕を与えているのだろう。
年を重ねたからこそ、違いを尊重できる
インタビュー中、和弘さんとは「すごく好きで結婚したわけではない」と繰り返した朝子さん。照れ隠しだけではなく、そのような結婚のよさを伝えたいからのようだ。
「前の結婚は、若かったこともあって、相手への期待や密着性が高かった。いつでも自分と同じように感じてほしいと思っていました。今はそうではありません。40年以上も違う生き方をして来た2人なのだから、マインドもパーソナリティも今さら変わりませんよね。
夫が私とは違う感じ方をしていても、いちいち目くじらを立てずに観察することを楽しめています。すごく楽だし、幸せです。違うことを前提にして、どうしたらお互いが心地良く暮らせるのかを考えています」
最も親しくて信頼できる間柄であるはずの結婚相手。気を抜くと期待し過ぎたり甘え過ぎたりしてしまう。それが原因でかけがえのない関係を壊してしまうこともある。
あくまでも別々の個人であることを認識し、お互いの「変わったところ」を受け流しながらも尊重し合っていかねばならない。よく言われることだが、結婚はゴールではくスタートなのだ。残念ながら離婚というゴールで終わってしまった場合は、少し反省をした後で新たな伴走者を見つけ、朝子さんのように2度目のスタートを切れば新しい幸せが待っているのかもしれない。
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