角川:メディアによく取り上げてもらえる当社の事例に、「サテライトオフィス」があります。これは、徳島県の神山町に古民家を1軒構えて、そこで社員に働いてもらうというものです。
神山町はとても田舎なのですが、いまはエンジニアが2人常駐しています。それだけでなく、東京のエンジニアが1カ月ぐらいそこに滞在して仕事を仕上げ、帰ってきたらまた次の人が行く、という活用法を5年ほど続けています。
こうしたリモートワークは、最近の流行りでもありますが、実際はなかなか難しくて失敗もあります。よくあるのが「言ったけれど、伝わっていない」というものです。
フェイス・ツー・フェイスのコミュニケーションでしたら、自分の意図が相手にちゃんと伝わったかどうか、直接その場で確認できますが、遠隔地で、オンラインやテレビ会議によるやりとりになるとそうはいかない。それでだんだん、人間関係に亀裂が入るということがありました。
そこで、リモートワークをするなら、オフラインで人間関係のベースをつくらないとダメだなと感じました。神山町にいるメンバーと東京にいるメンバーの関係がこじれてしまったら、神山町から一度戻ってきてもらって、オフラインで飲み会などをしながら人間関係を回復してもらい、その後で神山町に戻ってもらう、ということを学習しながらやっています。
ロボットが自分の代わりに
山田:Fringe81では、最強のリモートワークがありますよね。
田中:役員の1人がバリに住んでいます。ここで独立して事業をやっているわけではなく、日本に部下がいます。そこで、本人も「この状況をどうすればいいか」と考えたみたいです。
テレビ会議などで平面で相手を見ると、お互いに生きた感じがしないじゃないですか。そこで彼は、iPadを装備した電動ロボを導入して、東京のオフィス内を動き回らせるようにしました。このロボは、彼がバリから遠隔で動かしていて、首も伸び縮みします。
そうすると、普通に会議もできるし、「みんなは元気か?」って声をかけながらオフィスを回れるのです。このロボがフロアの段差とかに引っかかって動けないでいると、めっちゃかわいい。こういう「生きている感」がすごく大切です。
彼は、売上責任なども負っていますが、別に日本にいなくても問題なく部下をマネジメントできるなと私は思っています。
山田:Sansanでもロボットを導入するといいかもしれませんね。
角川:いいですね。当社が最近やっているのは、タブレットにSkypeで常時接続しておいて、会議のときに参加者がタブレットを連れてくるというものです。ロボットとまではいきませんが、タブレットのような小さい物体に顔が映っていると、なんとなくかわいく思えるということはある。人間味を持たせる工夫っていいなと思いましたね。
山田:佐々木さんのfreeeでは、在宅やリモートワークに関してはどうでしょう?
佐々木:何人かそうして働いているメンバーはいますね。ただ、その場にいる必要性が高い職種というのも、やはりたくさんあります。
クリエイティブの仕事は、たとえば「ふとすれ違ったとき」の会話から良いアイディアが生まれることもありますよね。『ワーク・ルールズ!』のなかでも指摘されていますが、そういうことは大事だなと思っています。
そこで、会社に来られるときはなるべく来てください、ただ、お子さんが病気になったとか、事情があるときはぜひ家にいてください、というかたちにしています。あくまで例外として自由にリモートワークができますよ、ということです。
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