池見:これから日本の人口、生産年齢人口が減っていくなかで、地理的制約や性差、ワークスタイルなど、いろいろな違いのすべてを受け入れてでも、優秀な人を採用していかなければならない、そういう時代が来ていると感じています。
『ワーク・ルールズ!』を読んで、試してみたいこと
参加者:『ワーク・ルールズ!』を読んで、さっそく自分の会社で試してみたという施策がもしあれば教えてください。また、社員がそれにどう反応したかということも併せて、教えていただきたいです。
当社のことを先に申し上げると、マネジャーが全社員に対してジョブ・ディスクリプション(職務記述書)を示すということを始めました。現場からすると、社員候補を紹介してくれと言われても、会社がどんな人を欲しているのかわからないというのが実情のようでして。
『ワーク・ルールズ!』のなかに、各チームのマネジャーが全社ミーティングなどの機会に「こういう人がほしい」と言ったほうがいいというような記述があり、それを試してみました。
角川:うちもジョブ・ディスクリプションをやっています。でも、本の中で僕らが面白いな、と思ったのは、ちょっとしたきっかけを与えて思うような行動をとってもらえるように仕向ける話(ナッジ)です。
何かをさせたくないときに、「何々をしてはいけません」という張り紙をするのではなく、それをしないように自然に仕掛けるというものです。
たとえば、僕らの会社ではナッツを食べ放題にしていて、1日4キロ消費します。この費用として月間30万円かけていますが、これを抑えようと思ってナッツのカットを小さくしました。やり始めたばかりで、まだ効果の検証には至っていませんが……。
佐々木:具体性に欠けるお話をして恐縮ですが、『ワーク・ルールズ!』に書いてあることを突き詰めると、結局メンバー1人ひとりが、やらされているのではなく、やりたいから仕事をやっているというところがある。そうした「やりたいからやる」という環境をつくることが、すごく大事だと思います。
ですが、実際にそういう環境をつくるとなると、マネジャーの負担が恐ろしく大きくなるでしょう。しかもマネジャーは、権威に頼ってはいけないという制約がある。
『ワーク・ルールズ!』を読んでから、「大変だ」と言ってくるマネジャーに対して、「そう、大変なんですよ、あなたの仕事は」と返していいんだ、と思える強さができたように思います。本書は、その方向性を貫こうと思うきっかけをくれたというのはあります。
田中:僕は『ワーク・ルールズ!』を読んで、悔しく、かつ気持ちが悪くなってしまいました。この著者がまだ考えていないことを考えていかないと、先がないように思えたんです。悩ましいですね。
いろいろ似たようなことをやっているようなので、「このやろう!」と僕は思ってしまいました。
質問の答えにはなっていないかもしれませんが、「この人たちがすでにやっていることは、俺はしない」という気持ちにもなり、なぜか燃えてきたという感じでした。
池見:僕らは、会社の売り上げや粗利などをすべて公開しています。アルバイトの人も含めて、24時間誰でも見られるようにしています。良いことも悪いことも、会社の状況をすべて公開するというのが、僕らの方針です。こうした情報公開にはデメリットもありますが、『ワーク・ルールズ!』を読んで改めて、これはやって良かったし、これからも続けていきたいと思いました。
また、この本を読んでこれからチャレンジしたいと思っていることが2つあります。1つは、Googleが取り組んでいるような定量的・科学的な人事を、他の会社の人事部門の方も簡単に実行できるようなサービスをつくりたいということです。
もう1つは、人事という業務にエンジニアをきちんと巻き込みたい、ということです。Googleはエンジニアベースの会社なので、本書には、エンジニアの観点から見た人事施策や改善案がたくさん書かれています。
それに対して、僕らの会社ではこれまで、エンジニアが強くかかわるのは開発だけでした。マトリックス組織のようなかたちで、人事のプロジェクトや改善項目をエンジニアと一緒に解決していくことに可能性を感じました。
山田:皆さん、お忙しいなか、最後まで議論に参加してくださって、どうもありがとうございました。
(撮影:今井 康一)
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