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「線香花火に1万円なんてありえない」と猛反発された…でも「これは100円で売る花火じゃない」小さな工房で花火師の妻が起こした静かな逆転劇

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伝統を守っていくには、花火を「作る」だけでは足りない。原料を確保し、体験として届けるところまで引き受ける。デザインの考え方は、ここでも生きていた。


専用の暗室。ワークショップで作った線香花火をすぐに楽しむことができる(写真:筆者撮影)

デザインが、つないでいくもの

良太さんの線香花火を見たあの日から、「筒井時正玩具花火製造所の花火を届けたい」一心で走り続けてきた今日子さんは、こう振り返る。

「気づけば、遠くばかりを見ていたんです。地元のひとたちには、デザインの話をしても伝わらないと思っていました」

稲作をはじめたことで、地域のひとたちとのつながりが少しずつ増えていった。そこへ重なった転機が、2020年のコロナ禍だった。遠方へ出ていくことができなくなり、視線は自然と足元へ向いた。窮屈な暮らしを強いられているひとたちがたくさんいるなかで、地元での暮らしは、何も変わらなかった。

農産物や果物が身近にあり、ひとに会わずとも自然に囲まれた時間は、豊かだった。

「花火のことばかり考えて10年突っ走ってきたけど、初めて時間ができたときに、農業や衣食住の大切さに気付いたんです」と今日子さん。

良太さんと今日子さん(写真:筆者撮影)

荒れたビワ畑を引き継ぎ、古民家を改装して宿を開いた。縁側で花火を楽しめる「山の家」には、地元のひとも通えるようにカフェを併設し、地域で育てた農産物を提供している。作り手がいなくなった地元の郷土玩具も、花火職人たちの手で引き継がれている。

この地で暮らし、地域ごと残していく。

それが、この地で100年生かされてきた家業の役割だと思うようになった。

「農業やまちづくりを通して、この地域の豊かさを知ったんです。花火もそういう役割だなって。地域のいいものを、日本の原風景を残していきたい。地域の伝統や文化を守れる存在でありたい」

デザインの力は、消えかけた国産線香花火に灯をともした。その小さな灯は、その土地を照らし、次の100年へとつないでいく。

今日子さんの話を聞きながら、取材前に訪れた「山の家」のカフェを思い出した。ランチに添えられていた花火には、こう記されていた。

日常に、小さな輝きを。

良太さん、今日子さんの次男がデザインしたパッケージ。幼い頃から両親の背中を見てきて、デザイナーの中庭氏と同じ学校でデザインを学んだ(写真:筆者撮影)
前編:冬にしか作れない線香花火がある…輸入99%時代に“400年の技”をつなぎ、日本最後の“藁の線香花火”を守り伝える花火師一家の覚悟
本編で紹介しきれなかった画像も! 線香花火の燃える様子や工房周辺の風景はこんな感じ
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