「線香花火に1万円なんてありえない」と猛反発された…でも「これは100円で売る花火じゃない」小さな工房で花火師の妻が起こした静かな逆転劇

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良太さんは「もっといいものを作りたい」と研究に没頭し、帰ってくるのはいつも明け方。結婚後、家庭に入り子育てに専念していた今日子さんは、ただ見守るしかなかった。

ところが、2000年のある朝、転機が訪れる。

今日子さん
花火の話になると生き生きする今日子さん(写真:筆者撮影)

この花火は、違う

2000年の秋口。暑くもなく寒くもない、過ごしやすい日の明け方だった。2カ月になる次男にミルクをあげ、哺乳瓶を洗って、ふっとひと息ついた今日子さんのところへ、真っ黒に汚れた良太さんが帰ってきた。

「毎日毎日、何しようと?」

わかってはいながらも、思わず口をついて出た。良太さんは答える。

「いやー、もう、難しい。わからん」

その手には、線香花火が握りしめられていた。

「じゃあ、ちょっとその線香花火見せてよ」

1本受け取ると、キッチンの流しで火をつけた。

そして、思わず叫ぶ。

「なにこれ! こんなの見たことない!」

良太さんが作った線香花火は、2、3本束にして燃やしているかのように激しく、遠くまで火花を散らした。今日子さんは確信する。

「売れん売れんとか言いよるけど、これは安価な中国産と一緒に並べて売るような花火じゃない。こんなに素晴らしいものなら、日本のいいものとしてちゃんと届けていかんと」

花火が大好きな「花火ファン」として育った今日子さんは、このとき、心に決めた。

自分の線香花火に少しずつ手応えを感じていた良太さんにも、OEM製造から「筒井時正の名前が入る花火を作りたい」との思いが芽生えていた。

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