週刊東洋経済 最新号を読む(5/16号)
東洋経済オンラインとは
ライフ #サオリス・ユーフラテスの数字の向こう側

「線香花火に1万円なんてありえない」と猛反発された…でも「これは100円で売る花火じゃない」小さな工房で花火師の妻が起こした静かな逆転劇

13分で読める
2/8 PAGES

良太さんは「もっといいものを作りたい」と研究に没頭し、帰ってくるのはいつも明け方。結婚後、家庭に入り子育てに専念していた今日子さんは、ただ見守るしかなかった。

ところが、2000年のある朝、転機が訪れる。

花火の話になると生き生きする今日子さん(写真:筆者撮影)

この花火は、違う

2000年の秋口。暑くもなく寒くもない、過ごしやすい日の明け方だった。2カ月になる次男にミルクをあげ、哺乳瓶を洗って、ふっとひと息ついた今日子さんのところへ、真っ黒に汚れた良太さんが帰ってきた。

「毎日毎日、何しようと?」

わかってはいながらも、思わず口をついて出た。良太さんは答える。

「いやー、もう、難しい。わからん」

その手には、線香花火が握りしめられていた。

「じゃあ、ちょっとその線香花火見せてよ」

1本受け取ると、キッチンの流しで火をつけた。

そして、思わず叫ぶ。

「なにこれ! こんなの見たことない!」

良太さんが作った線香花火は、2、3本束にして燃やしているかのように激しく、遠くまで火花を散らした。今日子さんは確信する。

「売れん売れんとか言いよるけど、これは安価な中国産と一緒に並べて売るような花火じゃない。こんなに素晴らしいものなら、日本のいいものとしてちゃんと届けていかんと」

花火が大好きな「花火ファン」として育った今日子さんは、このとき、心に決めた。

自分の線香花火に少しずつ手応えを感じていた良太さんにも、OEM製造から「筒井時正の名前が入る花火を作りたい」との思いが芽生えていた。

次ページが続きます:
【「どこにも真似できないものを作りたい」】

3/8 PAGES
4/8 PAGES
5/8 PAGES
6/8 PAGES
7/8 PAGES
8/8 PAGES

こちらの記事もおすすめ

あなたにおすすめ

ライフ

人気記事 HOT

※過去1週間以内の記事が対象