「線香花火に1万円なんてありえない」と猛反発された…でも「これは100円で売る花火じゃない」小さな工房で花火師の妻が起こした静かな逆転劇
「これはギフトなんだ。線香花火を、ギフトとして届けよう」
この気づきが、線香花火の「花」をどう届けるかを考えていた今日子さんに、向かうべき方向を示してくれた。
1万円の線香花火!?
九州ちくご元気計画の2年目となる2010年春、思わぬチャンスが訪れる。
商工会の紹介で出展した販売会でサンプルとして展示していた線香花火の「花」が、大丸百貨店のバイヤーの目にとまった。
「今年の夏、うちで販売できますか?」
「できると思います」
商品はできていた。販売するためにはパッケージを作り、価格を決める必要があった。今日子さんが生み出した「花」をいくらで売るのか。
ギフトとして、1万円で売る——。今日子さんの提案に、良太さんも両親も強く反対した。
「バカか。線香花火に1万円なんて、ありえん。手間ばっかりかかって、絶対売れん」
「遊びじゃないぞ」と良太さんも口をそろえた。
花火師一家にとって線香花火は「せいぜい100円程度」という感覚だった。一方、今日子さんは、いち花火ファンとして、1本の線香花火に込められた職人の技術とこだわりを知っていた。それに、届け方を整えることで、付加価値を生み出す。デザイン講座で学び、「絶対に取り入れたい」と思った考え方でもあった。
「安売りするくらいなら、もうせん。1万円にせんなら、もうやらん」
今日子さんの強い思いに、良太さんも味方についた。最後は、両親の反対を押し切る形で価格を決めた。
大丸への納品まで、残された期間はたったの1カ月。プロジェクトで紹介してもらった地元のデザイナー・中庭日出海さんと個別契約を結び、猛スピードでパッケージ作りがはじまった。中庭さんは徹夜で、目を真っ赤にして対応してくれた。
急ピッチでデザインが進むなか、肝心な「花」を量産する工程でも問題が起きていた。職人たちから納品される線香花火の火玉が、ポトリとすぐに落ちてしまうのだ。
「紙を変えよう」と良太さん。
「この和紙じゃないと、意味がない」と今日子さん。
どちらも譲らなかった。途中まで紙をよっては燃やしてみる。紙を巻く力加減、角度、あらゆる条件を試した。


















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