もうひとつの目玉は、現在米国ナンバーワンの呼び声の高いAndreessen HorowitzのCOOであるScott Kupor氏とWiL代表の伊佐山元氏の対談です。
Kupor氏は、シリコンバレーのベンチャーキャピタルが、金融セクター出身者よりも、自分で実際に事業を起した経験のある起業家出身者中心になっていくだろうとコメント。Andreessen Horowitzの投資スタイル<Mark Andreessen(ネットスケープ創業者)とBen Horowitz(起業家出身)が提唱する、起業家サイドに立つ投資・支援スタイル>が主流になると述べました。
伊佐山氏が、「ThinkerからDoer」と行動の重要性を述べると、Kupor氏も、シリコンバレーの強さは、「Flexibility to take risk, Flexibility to fail (リスクをとること、失敗することへの柔軟性)」であると、挑戦することの重要性を強調しました。
このほかにも、「大学とVCの共生」、「既存産業における破壊的イノベーションとVCの役割」、「企業のベンチャー活用と成功するCVC」、「ユニコーンへと導くVCとしての役割」、「これからの成長産業とVCの関わり方」など、日米のベンチャーを巡る重要課題について、双方の有名キャピタルによるパネルディスカッションが繰り広げられました。
登壇者のひとりであるインキュベイトファンドの本間真彦氏は語ります。
「予想されたことですが、改めて感じたのは、圧倒的なスケールの違い。彼らはビリオンダラークラスの会社を何社も作ってきているせいか、IoTのような最近のトレンドに対しても視座が高い。日本では始まったばかりという感じですが、北米ではもうExit事例が複数出ているので、IoTでもっと大きいことをするにはどうするか、というトピックになっています。2周差ぐらいついている感覚を受けました。差を見てガッカリしたのも事実ですが、同時にまだ自分が投資家として何ができるのかな、と前向きに思えた貴重な機会でもあり、気持ちの高揚につながりました。やっぱりベンチャーの聖地、スタンフォード大学の魔力かもしれません」
アカデミアの提言
会合では、ベンチャーキャピタルだけでなく、大学教授の講演もありました。
スタンフォード大学のCharles O’Reilly教授は、「The Ambidextrous Organization: 二刀流組織」として、大企業や成長するベンチャーが「イノベーションのジレンマ」を乗り越えて生き残る方策について語りました。
同氏は、成功体験が組織を縛ることに警鐘を鳴らしたうえで、スピード、柔軟性を重視する「Explore:探索」と、安定、効率を求める「Exploit:深化」の両立が重要とコメント。リーダーシップ、経営戦略、事業実施、価値創造のバランスをとった経営を提言しています。
また、今回、開催地として会場のお世話をいただいたスタンフォード大学アジア太平洋研究センターの星岳雄教授は、クロージングのあいさつで、会合の意義とともに、登壇者や参加者に女性が少ないことに触れ、米国、日本のベンチャー業界で、もっと女性が活躍できる環境を整えるべきと提言しました。
星教授は次のように感想を述べています。「この会議で印象深かったのは、多数の活力ある若い人達が日本から参加してくれたことだ。最近の日本の若者は内向きなどと言う人達も多いようだが、そんなことはない。このような若者達が日本の未来を作っていくのだ、と思って心強かった」。
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