「自宅が登録有形文化財」築150年の旧家に住む夫妻、13代目が守る"誇り"と"維持"のリアル 群馬県太田市・片山家住宅
太田市は、関東地方の中でも夏の暑さが厳しい地域として有名なエリア。しかし、英彌さんがエアコンをつけたのは一昨年、しかも寝室に一台のみです。美枝子さんが体調を崩したことをきっかけに、心配した長女・長男・次男から強く勧められてのことでした。
英彌「とても風通しのいい家なので、以前はクーラーなしでも問題なく眠れたんですよ。でも近年は気候が変わってしまいましたね。設置するのも大変だったんです。エアコンのドレンダクトを外に出すのに、梁が太すぎて穴を開けられず、仕方なく窓に隙間つくって出してもらいました。せっかくいい窓に替えたのに残念で……」
暮らしているがゆえの活用や情報発信の難しさ
英彌さんには、この家をただ遺すだけではもったいない、という思いもあるようです。
英彌「大袈裟かもしれませんが、文化を発信できるような場所になりうるのではと思っています。職人の技も含めて、こんな素晴らしいものが日本にはあったのだという。今後ますます、その価値は上がっていくんじゃないでしょうか」
そんな父の思いを知ってか知らずか、プロデューサーやディレクターとして群馬と東京で活躍する次男の昇平さんは、8年ぐらい前まで毎年ここで音楽フェスを主催したそう。
昇平「社会人2年目になり仕事に慣れてきた時期に、実家のことを広く知ってもらう機会をつくれたらいいなと、友達を20人ほど呼んで庭でバーベキューをやったんです。みんながこの家を見てびっくりしたり感動したりしている様子を両親も喜んでくれたことに気を良くして、翌年からイベントの規模を膨らませました。
最終的にはお客さんも100人ほどに増え、結果として最後は音楽フェスになる形で7年間イベントを続けました。その経験は現在の仕事にもつながっており、機会があればまたやりたいですね」
「僕は東京と群馬、2つの拠点を軸に生活しているので、東京に出たときに実家のことを発信したり、家族の中のPR担当を勝手に担っているつもり」という昇平さんですが、ホームページやSNSによる不特定多数の方への情報公開は、今のところ行っていない。理由は、この家が両親の暮らしの場であり、プライバシーや安全を守る必要があるからです。

















