「自宅が登録有形文化財」築150年の旧家に住む夫妻、13代目が守る"誇り"と"維持"のリアル 群馬県太田市・片山家住宅

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英彌「いろんな修繕に、私の代だけでも一般的な新築住宅1軒分以上はかかっていますね。毎年かかる維持費だけでも、本当に大変です。

裏庭の杉の木は、これまで何度か落雷を受けているんです。それで、建物を火災から守るために避雷針を立てることを思いつき、補助金を受けられないか調べたことがあったんですが、個人の所有物に税金は使えないということでした。近年の気候変動で雷雨が増えているので、不安が募りますね。

登録文化財制度は、建物に対する補助制度ではありません。だから、自力で維持できなくなる例が非常に多くなってきていることが問題になっていますね。でも、だからといって国の重要文化財になると、私的財産に公金を使うことが許されず、住むことができなくなってしまうんです」

職人不足の問題も、人ごとではないといいます。

英彌「この家を直せる職人さんたちが、いつまでいてくれるかは大きな問題です。例えば土壁ひとつにしても、もう県内に木舞掻き(こまいかき・藁の縄で、竹や細木を格子状に組んでいく土壁の下地)の土壁をやれる人がいません」

もっとも格式の高い座敷には江戸末期の襖絵がある。襖上の垂れ壁の右半分が白いのは、同質の材料が見つからなかったため(写真撮影/相馬ミナ)

文化財に住み続けることの誇りと苦悩

さまざまな悩みや苦労を抱えながらも、英彌さんには、そこで暮らし続けることへのこだわりと誇りがあります。

英彌「やっぱりそこに暮らしがないと、建物が生き生きしてこないですよね。そして、ただ住んでいればいいということでもなく、住み方によってはせっかくの家を台無しにしてしまいますよね」

建坪94坪もある大きな家の中でも、生活に使用するのはごく一部。ダイニングキッチンと茶の間、寝室が中心です。夫妻は、いつ誰に見られても恥ずかしくないように家の中を整え、古民家の雰囲気にそぐわないものはなるべく置かないようにしているといいます。

「その点、妻が一番の理解者として支えてくれているので、とても感謝しています」

南側の広縁付きの座敷。部屋の雰囲気を壊さない家具を選んで置いている(写真撮影/相馬ミナ)
広縁の一角に据えられたパソコンコーナー(写真撮影/相馬ミナ)
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