けんかもする。でも、ひとりよりずっと楽しくて豊か──。《シングルでも結婚でもない"女ふたり暮らし"》韓国発エッセイが示す新しい家族像

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二人暮らし
「シングルでも結婚でもない新しい家族の形」として韓国でふたり暮らしをするキム・ハナさん(左)とファン・ソヌさん(写真:『増補新版 女ふたり、暮らしています。』)
「人生のパートナー」として気の合う友人同士で暮らす2人の韓国人女性、キム・ハナさんとファン・ソヌさん。彼女たちの日々を描いたエッセイ『女ふたり、暮らしています。』は、2021年の発売当時、NYタイムズが「家族の概念を再定義する」と絶賛し、韓国でベストセラーとなったほか、日本でもSNSなどで話題になりました。
「シングルでも結婚でもない新しい家族の形」で日韓をざわつかせたふたりの暮らし。気持ちの変化、生活の様子を、ハナさんとソヌさん、それぞれが書いたエッセイから垣間見てみましょう(本記事は『増補新版 女ふたり、暮らしています。』より一部を抜粋したものです)。

分子家族の誕生〜from ハナ

「ひとり暮らしが性に合っている」というのは、10年ぐらいやってみてから言うべきことだと思う。

私の場合、初めはひとり暮らしがものすごく楽しかった。友達と一緒に住んだこともあったけれど、決して広いとは言えない空間をシェアするのは、性格と生活習慣がよっぽど合わない限り、お互いにストレスのたまるものだった。

私ひとりのためだけの空間で、足ふきマット一つから洗濯物の干し方、本の並べ方まで、自分の思いどおりにやるのが私の性格に合っていた(と思っていた)。

ところが、そんな生活が十何年も続くと別のストレスがたまっていたようだ。

いつだったか、釜山の実家に帰った時のことだった。

朝早くから両親が朝食の準備を始め、何かをぐつぐつ煮たり、がちゃがちゃと食器を並べる音に私は自然と目を覚ました。ご飯とチゲのにおいがした。その音とにおいに包まれて横たわっていると心がとても温かくなり、なぜか涙が出そうになった。

そんな些細なことにじんとしたのは、私ひとりで迎える静かな朝の空気はそうではないという意味でもあった。

その朝以来、私は、ひとり暮らしのために注いでいるエネルギーを意識するようになった。特に夜になると、余計な考えや不安のようなものに自分でも気づかないうちにずいぶんエネルギーを使っていた。

そのつらさが、ひとり暮らしの気楽さと楽しさを超えたのは、その頃ではなかったかと思う。

結婚は解決策ではないように思えた。

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