けんかもする。でも、ひとりよりずっと楽しくて豊か──。《シングルでも結婚でもない"女ふたり暮らし"》韓国発エッセイが示す新しい家族像
分子家族の誕生〜from ハナ
「ひとり暮らしが性に合っている」というのは、10年ぐらいやってみてから言うべきことだと思う。
私の場合、初めはひとり暮らしがものすごく楽しかった。友達と一緒に住んだこともあったけれど、決して広いとは言えない空間をシェアするのは、性格と生活習慣がよっぽど合わない限り、お互いにストレスのたまるものだった。
私ひとりのためだけの空間で、足ふきマット一つから洗濯物の干し方、本の並べ方まで、自分の思いどおりにやるのが私の性格に合っていた(と思っていた)。
ところが、そんな生活が十何年も続くと別のストレスがたまっていたようだ。
いつだったか、釜山の実家に帰った時のことだった。
朝早くから両親が朝食の準備を始め、何かをぐつぐつ煮たり、がちゃがちゃと食器を並べる音に私は自然と目を覚ました。ご飯とチゲのにおいがした。その音とにおいに包まれて横たわっていると心がとても温かくなり、なぜか涙が出そうになった。
そんな些細なことにじんとしたのは、私ひとりで迎える静かな朝の空気はそうではないという意味でもあった。
その朝以来、私は、ひとり暮らしのために注いでいるエネルギーを意識するようになった。特に夜になると、余計な考えや不安のようなものに自分でも気づかないうちにずいぶんエネルギーを使っていた。
そのつらさが、ひとり暮らしの気楽さと楽しさを超えたのは、その頃ではなかったかと思う。
結婚は解決策ではないように思えた。


















