けんかもする。でも、ひとりよりずっと楽しくて豊か──。《シングルでも結婚でもない"女ふたり暮らし"》韓国発エッセイが示す新しい家族像

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韓国の単身世帯率は35パーセントを超える〔統計庁の人口住宅総調査によると、2023年の単身世帯数は782万9000で、全世帯数の35.5パーセントに当たる〕という。

単身世帯は原子みたいなものだ。もちろん、ひとりでも十分に楽しく暮らすことはできるけれど、ある臨界点を超えると、ほかの原子と結合して分子になることもできる。原子が2つ結合した分子もあるだろうし、3つ、4つ、あるいは12個が結合した分子の生成も可能だ。固い結合もあれば、ゆるい結合もあるだろう。

女と男という2つの原子の固い結合だけが家族の基本だった時代は過ぎ去ろうとしている。この先、多様な形の「分子家族」が無数に生まれるだろう。

私たち家族を分子式にたとえるなら、W2C4といったところだろうか。女ふたりに、猫が4匹。この分子構造は今、とても安定している。

ソヌさんとハナさん
(写真:『増補新版 女ふたり、暮らしています。』)

2種類の人間〜from ソヌ

「世の中には2種類の人間がいる」

これは私が文章を書くにあたり、どう書きはじめるべきかいいアイデアが浮かばない時にときどき使う陳腐な書き出しの一文で、キム・ハナと暮らしながら悟りはじめた新鮮な真実でもある。

外出のたびに服のコーディネートに頭を悩ませなければならないことにストレスを感じる人がいる一方で、2日連続で同じ服を着なければならないと憂鬱になる人もいる。

同じ服装で過ごすことが、ある人にとっては悩みを減らしてくれる簡単な方法である一方で、ある人にとっては変化の楽しみを奪われることであり、苦痛となるのだ。

ひとりは仕事をする時には音楽も聴かず、ひとりはパソコンに文書から映像、検索、チャッティングまで5つほどウィンドウを立ち上げて、代わる代わる開きながら仕事をする。

旅行先では、スマホを遠ざけて現地の空気のにおいまで一つひとつ心に刻み込むのが本当の旅行だと信じる人がいるとすれば、ネット世界とのコミュニケーションを絶対にあきらめられず、移動中もせわしなく情報を検索しながら、次の日程を次々と組んでいく人がいる。

ここまでの話で前者はキム・ハナ、そして後者は私だ。

キム・ハナにとって皿洗いは生活の中に訪れる瞑想の時間で、私にとっては料理がいちばん面白い遊びだ。

お気に入りのボディソープを見つけたキム・ハナが、絶賛しながら同じものを何本も使い続けて純情を捧げている時、私は名前も覚えられない世界各国のさまざまなブランドの、さまざまな香りのボディソープを5種類以上並べて毎日違うもので体を洗っている。

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