帰宅したら死んでいた猫、今も消えぬ喪失感。《韓国の人気エッセイが綴るペットとの暮らし》。いつかは別れの日が来るとわかっていてもーー

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ネコたちとの暮らし
日々の生活に楽しみと癒やしを与えてくれるペットの存在。一方で避けられないのが永遠の別れです(画像:『増補新版 女ふたり、暮らしています。』)
「人生のパートナー」として気の合う友人同士で暮らす2人の韓国人女性、キム・ハナさんとファン・ソヌさん。彼女たちの日々を描いたエッセイ『女ふたり、暮らしています。』は、2021年の発売当時、NYタイムズが「家族の概念を再定義する」と絶賛し、韓国でベストセラーとなったほか、日本でもSNSなどで話題になりました。
そんな2人と共に暮らしてきたのが4匹の猫たち。このたび改訂・加筆して発売された『増補新版 女ふたり、暮らしています。』より、エッセイ「ゴロを見送る」をご紹介します。
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けんかもする。でも、ひとりよりずっと楽しくて豊か──。《シングルでも結婚でもない"女ふたり暮らし"》韓国発エッセイが示す新しい家族像

老いた猫たちとの暮らし

猫が「ニャオーン」と鳴くというのは、猫をよく知らない人たちの間で広まっている誤解だ。

実は、猫は「ウァーン」と声をかけてきて、「ウゥーン?」とあいさつし、時には「オンマ(母さん)!」「オンニ(お姉ちゃん)?」「ウェエ~(なんでよ〜)」と叫んだりもする。

18歳の誕生日を過ぎた私たちの1番目の猫、ハクは毎朝、「ウォォォォッ!」と沸き起こる怒りによって人を起こす。「おなかすいた。早くごはん出しやがれ!」という意味だということは誰が聞いてもはっきりわかる。

1日2回飲ませなければならない薬と栄養剤があるので、心不全猫用のウェットフードといろいろなおやつを混ぜてあげるのだけれど、毎回少しずつ材料に変化がないと興味を示してくれない。

器にもうるさくて、平べったいお皿のふちに余白をたっぷり残し、ちょこんと真ん中に見栄えよく盛ってさしあげないと、においだけかいでツンとそっぽを向いてしまう。

私たちは、格式高い高級レストランでコース料理を提供するシェフのように、毎日慎重にマグロや鶏むね肉のキャットフードを選び、スプーンで潰して食べやすく盛り付け、さらには貝柱のスープをかけて出すけれど、「これじゃない、これじゃないんだってば」という悪評に挫折することも少なくない。

そのたびに、ごはんの上にペースト状のおやつを少し絞ったり、カリカリしたスナックを細かく砕いて載せたりしながら別のきれいなお皿に移し替えるなどあらゆる努力をする。気がつくと、いつの間にか猫の食器の洗い物が人間の食器よりもたまっている。

家族のネコ
(画像:『増補新版 女ふたり、暮らしています。』)
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