続けられない人の欠点は「努力」でなく「分析」 継続の「打率」を上げていくための得策は

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もちろん、これはあくまで僕が経験した一例でしかありません。しかし、大掛かりなことをしなくても、自分の状況をきちんと見極めればほんのちょっとした工夫でも継続率を高められる、という点では、ひとつのヒントにはなると思います。

「続けられない!」「継続力がない」と悩んでいる人は、自分の1週間、1カ月の行動週間の中で、自分のやりたいこと、続けたいことを妨げている要因はどこにあるのか。どこを変えれば、いままで続けられなかったことを続けられるようになるのか、というふうに考えてみてください。

要因分析は「自分の現実を知る」ための作業

それは言い換えれば「いまの自分(現実)を知る」という作業でもあります。たとえばいくらダイエットをしても続かない、という人は、<私の食生活が安定しない(コントロールできない)原因はどこにあるか>と考えてみる。それはもしかすると、夜寝る時間が一定していないからかもしれません。ではなぜ、夜寝る時間が一定しないのか。それは、仕事が終わってから、なんとなく飲みに行って、そこで食事を摂っているからかもしれない。

だとすれば、その人の場合は「飲みに行く回数を減らす」ということが、生活習慣を整える上で、一番の近道かもしれませんね。それは、「摂取カロリーを減らす」といった、直接ダイエットに関係すること以前の「生活習慣を変える」といったことですが、結果的には「ダイエットの継続率」ということでいえば、飛躍的に確率を高めることができるはずです。

飲みに行くのをやめれば、しっかり食べても30分ほどで食事を終えて、飲みに行った日よりも2時間は早く帰宅できる。その2時間で、睡眠時間をしっかり確保して、朝、早起きをする。それだけでも、それまで3日坊主だったダイエットを継続できる、大きな要因となるはずなんです。

まずは自分が「続けられそうもないことに手をつけようとしていないか」をチェックする。その上で、何かに取り組み始めたら、それまでの自分の生活習慣の中で、それを継続する上で有効そうなポイントについて、変えられるものを変えてみる。たったこれだけのことで、それまで1割バッターだったあなたの「継続力」は、3割、4割バッターに成長させることができるのではないかと思います。

 
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名越 康文 精神科医

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なこし やすふみ / Yasufumi Nakoshi

1960年、奈良県生まれ。精神科医。専門は思春期精神医学、精神療法。近畿大学医学部卒業後、大阪府立中宮病院(現:大阪府立精神医療センター)にて、精神科救急病棟の設立、責任者を経て、99年に同病院を退職。引き続き臨床に携わる一方で、テレビ・ラジオでコメンテーター、映画評論、漫画分析など様々な分野で活躍中。
著書に『心がフッと軽くなる「瞬間の心理学」』(角川SSコミュニケーションズ、2010)、『毎日トクしている人の秘密』(PHP、2012)、『自分を支える心の技法 対人関係を変える9つのレッスン』(医学書院、2012)、『驚く力 さえない毎日から抜け出す64のヒント』(夜間飛行、2013)などがある。
夜間飛行よりメールマガジン「生きるための対話」刊行中。オフィシャルウェブサイトはこちら。twitterはこちら

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